56号へ

人形情報紙
ベベ通信57
vol.56'03/8月 BYまりりん石原
ホームページバージョン

58号へ 

「ベベ通信」は、もともと通信販売商品に同封する為に発行している人形情報のフリーペーパーです.
これは、そこから抜粋したホームページバージョンです

これからのべべ

 今回の「べべ通信」も、ネット上では公開していない、ペーパーだけのバージョンです。

今後について、現在わかっていることをお知らせします。

 

引越しを考える

 現在のアトリエは、築38年、リフォームはしてあるので使うことには支障はないのですが、外観はとにかくボロボロで、そろそろ寿命だなあ、という感じでした。新しいアトリエをと、もっと便利な場所を中心に、いろいろ探したのですが、これが、なかなかない!実は静岡は、物価がものすごく高いのです。家賃や土地も東京の郊外並に高い!しかも、賃貸はもちろん分譲マンションなどは、「お教室」は「お店」と同じで、「店舗物件」でない限り、許可されているところはとても少ないのです。店舗となると、また家賃はすごく高い!不況で物件は余ってそうなのに、これが意外にないものです。もちろん限られた予算もありますので、賃貸にしても購入にしても、駅前などの便利な場所は、ちょっと無理。また、“あかぬけない土地柄”もあって、気に入った物件を探すのはかなり難しいのです。

いまのアトリエは駅から遠いけど、車なら便利な場所です。マンションと同じ経費なら、思い切って、自分で思いどうり設計して、この場所に新しく建てることに決めました。

 とはいえ、土地は借りて、うわものだけ自費で建てるのですけどね。

 

引越しが現実に

 いよいよやる気になり、現実化してくると、大変なことばかり!とはいえ、家を建てる人はみんな経験することばかりなのでしょうが、普通の家ではなく、店舗。人形の常設ギャラリー+お教室。人形好きがいつでも気軽に来れるような、静岡といえばここ、というような場所。で、私が泊り込み出来る場所も欲しい。でも、現時点(7月下旬)で、まだ設計はできてないのです。どうなることやら。

 設計と同時進行で、アトリエの引越しを考えなければなりません。とりあえず、お教室は実家の自分の部屋でやることにして(1部屋カラにしないと!)、アトリエの膨大な荷物は実家と、アトリエの倉庫(実家と兼用)に全部片付けなければならない!気が遠くなりました。

 どう考えても、通販の在庫を閉まっておく場所がないのです。正確に言うと、ダンボールに入れて積み上げてしまえば場所はなんとでもなるのです。ただ、通販をやるとなれば、ある程度整理された状態で、出し入れをする前提で、しまわないとなりません。その場所がどうにもありません。これは、通販は休まざるを得ないな、と思いました。

 

そんなとき!

 話は先々月・先月に戻りますが、アトリエベベを痛烈に批判する人たちが出ましたね。わざわざ通販して、他のサイトの掲示板などでたたく、などという粘着質な感じもありますが、「アトリエベベは使えない」という意見は、まあ、ある意味正しいんでしょうね。全ての人にやさしいところには作っていないですもの。だからこそ、ちょっと厳しい「お約束」があり、それが嫌な人は利用しないでくださいね、と言っているですから、そこでやめるか行くかは、大人の判断をしてもらわないといけないのです。納得できないのに、「進む」をクリックして、通販して、イメージと違うとか言って返品を求め、できないと言うと、「できないんだって!ひどい!」と、直接うちにではなく、他の掲示板サイトに書き込むのです。嫌なら、縁を切って欲しいのに、延々とこちらからネタを拾っては遊んでいるのが、本当にキモチワルイ。

 こちらのキャンセルお断りのメール(もともとHPで説明されているのに、再度)を、自分のあまりにも理不尽な言い分は棚に挙げ、他の掲示板サイトに“合よく編集してコピーした奴”もいましたね。

 

 私が考えるのには、つまりは、裾野が広がりすぎてしまったのです。私は、もともと、志を同じくする創作人形の仲間のために、通販で材料を分け始めたわけで、まっとうな商売をしているつもりはないのです。こんなお店やさんごっこみたいなところが、ちゃんとしたお店のようにできるわけがない、と今でも思います。だから、本当に材料を必要な人で、こっちの合を聞いてくれてもいいよ、という人にだけ、分けたいのです。

 

 「アトリエべべは創作人形以外はバカにしている」という意見が、市販ドールオーナーの人からは出ているようです。ちがいます。私は創作人形しか知らないんです。市販ドールの知識が全くないので、それを話題にすることができないし、市販ドール用のラインナップができないだけです。市販ドールには、専用のウィッグなどがあるでしょうから、それを尊重してくれればいいし、それでも、うちの方がいい、といってくれるなら、喜んでお譲りします。ただ、市販であるものを、「安いから、サービス悪いけどイヤイヤ買ってる」なら、別に利用しなくて構いません。私がもし、儲けだけでやっているのなら、もっと市販ドールの研究をして、それ用の販売をしますよ、にこにこして。

 たまたま、アトリエベベ叩きをしているのが、市販ドールオーナーだっだというだけで、市販ドールオーナーがみんな同じだと思うほど、バカじゃないつもりです。実際、市販ドールオーナーの方から教えていただいたこともたくさんありますし、仲良くなったお客様もいっぱいいるのですから。

 

話は長くなりましたが、もともと私が「(信念ある)気まぐれ」でやっていること、他のお店と一緒じゃないので、正直、もう新しく知らせる必要はないんじゃないかと思いました。こんなに苦労するのなら、通販を辞めても悔いはないのですが、それでは、自分が(おこがましくも)救ったはずの多くのお客様を、また困らせてしまいます。それが、最大のジレンマでした。

 

来年からのべべ

皆さんが気になっているのは、たくさんメールもいただきましたが、今後のことでしょう。新しくギャラリーができると、また忙しくなるかもしれません。今のところは、自分が関わる・関わらない、どちらにしろ、通販は続けるつもりではおります。HPおよびカタログがどのような形になるかはまだわかりませんが、会員のお客様には、メールでお知らせするつもりでおります。

 

新たなる会員制について

 今回、一番こたえたのは、叩きをしている人の中心が(何人いるかはわかりませんが)、通販利用者、つまり会員の人だったことです。それも含めまして、今回の一時閉鎖をもちまして、会員制はリセットさせていただきます。皆様にはお手数ですが、再開の際には、再度の会員登録をしていただくことになろうかと思います。

 

閉店中のこと

 閉店中は、しばらく引越しなどで忙しいとは思いますが、3月のオープン(新作展開催予定)に向けて、新作を作るつもりでおります。

 

 もし、9〜2月の間、材料のことでどうしても困ってしまった場合、とりあえずご相談ください。無条件にお受けするというわけにないかないとは思いますが、相談だけでも、してくださいね。閉店中もお教室は続けますので、自分の分、生徒の分の材料を、1〜2ヶ月に1度くらいは、取り寄せするつもりでいます。ただし、これはおおっぴらにはしませんので、こっそりしてくださいね。くれぐれも他のサイトの掲示板などに書かないでください。HPのカタログは閉める予定ですが、カタログのファイルをメールでお送りするか、できればこっそりウェブにある秘密のアドレスをお送りします。

また、転送手続きをしますので、メルアド、住所は、今のところ変更ありません。電話・FAXは使用不可になります。

 

祖母のこと

 私が教室とこの通販を始めることになったのは、8年前の祖母との展覧会がきっかけでした。

 祖母は、若い頃、0から自分で繊維業の事業を興し(祖父も自分で他の事業をしていましたが)、晩年は手織の裂き織作家として、たびたび展覧会をしていました。骨董ブームが起こるずっと前から骨董品やアンティーク、特に縮緬を収集していましたので、私は、小さい頃から布に囲まれて過ごし、織物や染色のセンスの刺激を無意識に受けていたのだと思います。いい縮緬をめちゃめちゃに切って、ヘタな布人形に着せていたのですね。その祖母の集めたいい着物をもらい、本格的に始めた人形に着せたのが、今の原点ともいえます。ブーム後に着物を集めたのでは、高価で始められなかったと思います。祖母は、本当は私に裂き織を継いで欲しかったのかもしれません。手織機(はた)が無駄になっちゃうネエ、なんて言ってましたが、誰よりも私の人形のファンで、斬新過ぎるかなあ、という人形を、先ず一番にほめてくれる人でした。“人形=お雛様”の、とかく保守的な田舎で、大正生まれのおばあちゃんで、半裸の男性の人形をほめてくれるなんて、なかなかいなかったです。まさに祖母は、作家としても、事業家としても、尊敬できる大先輩でした。思えば、祖母は、今私がやっていることを、50年以上前から、やっていたのです。

 8年前、祖母と一緒にやった展覧会(裂き織&人形)が成功し、より多くの人に見てもらって、是非人形を習いたい、という問い合わせをいただき(私にできるかなあという気持ちも強かったのですが)、教室を始めました。当時、フランスから帰ったばかりで将来を決めていなかった私にとって、人形を教える、というささやかながら将来の道が見えた、記念すべき展覧会でした。

 

 今日(‘03.7/21)は、実は、そんな尊敬する祖母のお葬式だったのです。若い頃は大変な苦労をしたそうですが、本当に思い通りにバリバリ働き、成功し、親戚に囲まれ、幸せな人生だったと思います。祖母が楽しみにしていた新しいアトリエを見せてあげられなかったことが唯一の心残りなのですが、私が自分の道を決めていたとき、一つの区切りがあったのも、偶然ではなさそうです。これまで、忙殺されていた人形製作を、ゆっくりしたいとおもいます。祖母の残してくれた目に見えるのも、見えないもの、大切に使いたいと思います。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆今月のギャラリー☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「The Moon」

58cm

56号へ / [57号] / 58号へ