Margaretの部屋/5月
パリ&ロンドン一人旅

行動編U


マーガレットのブログ日記




 5月22日(火曜日)

 7時、頭痛で目が覚める。
ああ、ここパリだ。
現実って妄想の通りには行かないのね・・・。うちわもフィギュアも使う暇なかったし、プログラムも買えなかったし、アフターライブの2人にも会えなかった。ネガティブなことだけ思い浮かぶ。
 えらくダウナーだった去年も同じこと考えた(いやアンタ、去年はニールに奇跡的に会えたじゃんか。何で去年あんなにダウナーだったのさ)。

 確かにここ3日間のPSBのスケジュールはハードすぎる。これはお仕事でやってるんだから、ファンサービスよりも、スケジュール調整だとか体調管理だとかの方が大事なの・・・そう思う。彼らは大人なのだ。ミュージシャンかつビジネスマンとして22年こうしてやって来ている実績があるのだ。いいほうに考えよう。本当、彼らを見ていると、音楽も”仕事”なんだと思わされる。

名曲「Rent」は“アイ・ラブ・ユー、家賃を払ってくれるから”だったけど、いまは
“アイ・ラブ・ユー、チケット買ってくれたから”・・・なんだろうな。そう、ワタシらに与えられたのは、チケット1枚分、2時間のショーのお楽しみなのだ。そういうお仕事なのだ。

 しばらく部屋で自分を納得させる・・・意外と納得した。彼らは私の妄想の産物ではなく、現実の巨大ビジネスのパーツのひとつであることは、去年思い知らされたから、そんなにショックじゃない。意外と前向きだ。

 そうだ。ホテルでは朝食をとっていないので、高級なサロンに朝食を食べに行こう。一人だと、こんな思いつきも思い通りにできちゃう。

 今回は、異常な食欲だ。とにかく食べたいものは全部食べるつもりだ。
身支度をして、バスに乗って左岸、サンジェルマン・デ・プレに向かう。ワタシはメトロよりバス派だ。たしかにパリのバスは、道が一方通行が多いので、バス停の上り・下りの停留所が違い、乗りこなすのが難しい。でも、すべてが絵になるパリは、車窓がそのまま観光になる。このバスだって、市民の足だけど、ルーヴルのピラミッド前にもバス停がある、れっきとした観光バスになり得る。

 セーヌ川岸のボーザール(美術学校)でバスを降り、少し歩いてL’Hotelへ。そのものずばり「ホテル」という名のホテルは、たとえばリッツやプラザ・アテネみたいなこれ見よがしな超高級ホテル然とはしていないけど、最高級4つ★Lホテルだ。そう思えないほど小さなホテルだけど。で、オスカー・ワイルドが亡くなった場所でも知られていて、その部屋(部屋名もまんま“オスカー・ワイルド”)は現在ではスイートルームとして実際に宿泊できる。この1泊10万円以上の部屋に宿泊することは、ラグジュアリーなゲイの憧れなのよね〜。
 実際、去年プライベートでパリを(ディオール・オムのコレクションに、2人で)訪れたニール&クリスはここに宿泊している。ところが、ワイルドのマニアのニールではなく、泊まったのはクリスのほうらしい。まさか2人一緒に一部屋に泊まったとは思えないけど・・・どやねん。
 今日は泊まっていないよね?ないよね。



オスカー・ワイルドのプレート


玄関を見上げると羊がじっと見ています


小さなホテルの表札。通りも小さい。
 

ワイルドの部屋(公式写真)


ここを見学したら、すぐ近くのサロン・ド・テ「LADUREE」ラデュレへ。オープンはマドレーヌ店、シャンゼリゼ店より新しいけど、古い建物をそのまま使っているので、もう100年も前からあったような雰囲気だ。2階のティールームでは、近所のマダムや日本人観光客(!)がプチ・デジュネ(朝食)を楽しんで入る。片隅で写真撮影をやっている。
 ワタシは午前中限定メニュー、パン・ペルデュ(フレンチトースト)と紅茶を頼む。ここのパン・ペルデュはブリオッシュで作ってあって、シャンテイー(生クリーム)添えだ。甘いけどおいしい。



 おなかが満たされたので、サンジェルマン・デ・プレをプラプラ歩く。ブランド・マニアならたまらないんだろうなあ。あと、サン・シュルピス寺院も、ダ・ヴィンチ・コードのマニアならたまらない?ワタシはウィンドー・ショッピングですよ。途中のジェラール・ミュロでパンを購入(これはランチ用ですから)。
 左岸唯一のデパート、ちょっとこじんまりしたボン・マルシェまで歩く。ここはいつも混んでいないので、好き。ヴィトンもがら空きですよぉ、ブランド・ゲッターのみなさん。パリのおされ〜なインテリア、ファッションをひとおおり見物し、グランエピスリー(食品館)へ。ここは珍しい食材・かわいいパッケージのお土産の宝庫。
 持ち帰りできない冷蔵品を中心に写真を撮りました。


バター。中央が有名なエシレ


フロマージュ(チーズ)


生パスタ、ラビオリ


インスタント食品もおいしそう。
 

ヨーグルトやデザート


スモークサーモンなど

う〜ん、ブランド・ショッピングより、デパ地下(地上ですが)巡りのほうが楽しい〜〜。
お土産にいくつかお菓子類を購入して、いったんホテルに戻る。なんだかんだ言ってもう3時かあ。
 


「水のドンペリ」と称される発泡ミネラルウォーター、
シャテルドン。
日本でもネットで売っているらしいが
瓶入りなので2000円位します。
パリでは1リットル入りで1瓶約200円。
パリに来たら是非飲んでください。


さっき買ったサンドイッチとサラダで遅いランチ


 さて、実は今日もライブである。先日新しいアルバムが出たばかりのルーファス・ウエインライトのライブが、ラッキーにもワタシのパリ滞在中に当たった。見たかった、ルーファス。本当はこのアルバムのエグゼクティブ・プロデューサーはニールだから、ゲストで来てほしかったけど、今頃PSBご一行はアムステルダムに向けて移動中である(なにせワタシがついていけないくらいハードワークである)。
 (ちなみに5月30日、イギリス・ブライトンで前日ライブをやったルーファスと、同じくブライトンでライブをしていた2人は顔を合わせたそうである・・・と、公式HPに書いてあった)

 実はここ数日、パリは天気がよくてとても暑い。天気予報では28度とか言っている・・・夏じゃん。髪をアップにしたくて、デパートを回り、何か髪飾り的なものを探したけど意外に高い。日本は100円均一を始め、ドラッグストアとか雑貨はけっこう安いと思う。パリはそういう店が少ないかもしれない。

 ルーファスのライブは、モンマルトルのピガール近くのトリアノン劇場。クラシカルなつくりだ。ここもちゃんと席があるし、わ〜〜っとなるような雰囲気でもないので、余裕で入る。席は前から10番目くらい、やや右。


意外にムチムチしていてかわいいルーファス。
普通の男の子っぽい。


アルバムジャケットウラと同じ、半パン。

 ルーファスは両親がカナダ人だがニューヨーク生まれなので、アメリカ人なのかも。でも、フランス語はペラペラで、ずっとフランス語でしゃべっていた。けっこう曲と曲の間のおしゃべりが多く、ピアノ弾き語り、アコースティック、とバラエティに富んだ構成で、サービス精神たっぷりという感じ。もともと“鼻ビブラート系”なので、話し声・笑い声はけっこうニールに似ている。歌うとそうでもないんだけど。
 CDで聞くより力強い、ロックよりの構成もあった。

 もともとベタなゲイ男子のたしなみで、オペラや舞台が大好きなルーファスは、「ルーファス、ジュディ・ガーランドを歌う夕べ」なんていうコンサートも前にやっているくらいだが、今回はどうゆうふうに取り入れるんだと思っていたら、コンサート終了。が!ここからが本領発揮。アンコールで出てきたルーファスは、バスローブを羽織っていた。で、なにやらミュージカルについて話しながらバスローブを脱ぐと、網タイツを履いているじゃないすか。で、まだ楽しそうに話しながら、ハイヒールを取り出し、履き、キラキラ光る指輪とイヤリングをはめ、口紅も塗りだした。ジャケットの下にボトムスをはいていないので、パンツ見えてる状態?これってドラーグなのかな。で、まるでライザ・ミネリ(ガーランドの娘)のようにミュージカルスタイルで踊りだしました。
 さっきまでバックバンドだった男性たちもタキシードに蝶ネクタイ着させられ(笑)、ルーファスの趣味に付き合わされております。わはは、おもしろい、こんなルーファスはじめて見たわぁ。


魅惑の脚


ジャケットの下、ズボンはいてないのよね


ノエル・カワードととかも歌っておりましたわよ!
一通り踊り・歌い、ふたたびギターを持って自曲を歌い、終了…。
こんな風に、ライブに来たお客さんだけを楽しませてくれるのっていいよね〜〜。
PSBは良くも悪くも音楽職人だから、ライブのサプライズってあまりないよね。

 10:30、ショーがはね、ホテルに帰る。ピガールは東京で言えば歌舞伎町、ガイドさんなら「絶対に夜一人で歩かないでください!ムーランルージュ行くのとかもホテルからタクシー使ってください!」とか、口をすっぱくして言われる場所なんですが、ワタシはメトロ&駅から走って帰りました。まねしちゃダメですよ。

 今日も無事1日終了。




 

 


5月23日(水曜日)

 今日は、パリ観光っぽく過ごそうと思う。
バスに乗ってルーヴル美術館に行く。ここはもう何度も来た。でも、有名どころは一応抑えておく。朝一だからか、モナリザなど人気のあるものは人だかりだけど、マイナーなほうはけっこう空いている。フェルメールを10cmのところでじっと見つめてみた。

 美術館の絵や彫刻というものは、絵がどうこう言うより、「なんでこんなデカくて意味不明な絵を描いたんだろう」とか言う方に興味がわく。まあ、古典はほとんど宗教画なんだろうけど、それにしてもヘンな絵が多い。世界的な美術館とはいえ、一歩間違えればかなりビザールなコレクションだなぁ。

 美術館というのは疲れるもんだ。3時間が限度。ランチだ、ランチ。ルーヴルの回廊の中にあるカフェ・マルリーの、ピラミッドの見れるテラスの特等席が開いている!すかさずそこへ。左隣ではおっさん(40歳くらいか)2人が飲み食いしているが、観光客?おっさん2人で?なに?どうゆう関係?
 右隣が空いて、日本人カップルが。明らかに男のほうがメニュー読めず、何を頼んでいいかわからない。あきれる女。本当にカップルなの?別れるな、きっと。


 


クロック・マダム
(薄切りパンの間にチーズとハムをはさみ、上にベシャメルソースをかけて焼き、目玉焼きをトッピング。)
それにカフェ・クレーム(カフェオレ)。
おいしかったけど、これで約2,500円は高いなあ。
いくらフランスの外食は高いしさらにユーロ高とはいえ、景色代か?


ルーヴルをあとにして、チュイルリー公園をはさんだ向こう側、2006年に新装オープンしたオランジュリー美術館に行く(公園をつっきるので1キロくらい歩く)。ここはモネの睡蓮と印象派コレクションで有名な小さな美術館。
 人気があるので午前中は予約の団体のみで、フリーの客は午後から。それでも入場制限があるので、やや並ぶ。並んでいる間に妄想がぐ〜るぐる。
 私の前にいる男性2人組、やっぱり30〜40代の2人組なのだが、観光客なんだろう。背が低めのほうがクリスに似ている。まあ、帽子とサングラスと3本線のシャツのせいだと思うが・・・それでもちょっと丸めの鼻とあごの辺りはいいセン行ってる。背の高いひょろっとしたほうは、細かいところはニールには似ていないけど、遠目で見ればPSBっぽい。しかし、2人で旅行ですか…オランジュリーに来ますかね。ヨーロッパ人ってのはこういう友人同士は多いんでしょうか。それとも本当にカップルなんでしょうか。美術館の中に入っても、お互いを写真で撮りっこしていたから、本家PSBみたいだな、やっぱり。

 あ、睡蓮には癒されましたよ。工事していたのも睡蓮をよく見せるためだけの改装だったんですものね。


知らないオバさん



リボリ通りのサロン・ド・テのアンジェリーナに行く。ここはモンブランで有名。銀座にも支店がある。ワタシは甘いものや栗が嫌いなのだけど、なぜかここのモンブランが大好き。パリサイズより2/3くらいのサイズでさえ甘くて食べきれないという人もいるが、ワタシはパリサイズを平気で平らげる。でも他のモンブランや栗は嫌い。フランス栗が好きなのかな。


アンジェリーナの特大モンブラン
 


ジャン・ポール・エヴァン、メゾン・ド・ショコラ、ピエール・マルコリーニ(本店はベルギー)、パリはチョコレート・パラダイス

3時頃、日本語のできるネットカフェでインターネットをやる。ここの日本人店員が死ぬほど感じ悪い。どうもパリにいる日本人は、感じ悪くすることが、パリっぽくなる第1歩だと思っているらしいぞ。
いったんホテルに帰る。3日連続こんな生活。
 
 今日はベルシー・オムニスポールでジャスティン・ティンバーレークのライブ。別にジャスティンのファンじゃないけど(それでも一応アルバムは買って何度か聞いてきたけど)、一度ベルシーには行って見たかった。ベルシーは東京ドームみたいなところ。客層も多分、若いだろう。ベルシーはちょっとパリのはずれにある。近所にベルシー・ヴィレッジという、ワイン倉庫を改装して作ったショッピングセンターもある。ここで夕食を食べようと思ったんだけど、なんだかファミリー向けで、入り辛く、スターバックスでいいにした。意外とお店の数も少ないし。

 ベルシーの会場に移動すると、会場前は渋谷みたいに若者が溜まっている。路上ライブも開催され、まるでお祭り。ダフ屋がうろつく。よくあるコンサートの風景だ。チケットに書いてある開始時間は20:30なのに、20時15分を過ぎても客入れがぽつぽつだ。大丈夫なのか。20:30くらいに会場に入ると、前座のバンドが演奏している。会場がめちゃくちゃ広い!気持ち悪いくらいだわ。日本のジャニーズのコンサートってこんな感じ?ベルシーは大きなすり鉢状の360度の観客席で、真ん中のアリーナ・ステージでアーチストが歌う。うう、わたし高所恐怖症なのよ。人ごみもやや恐い。
 21:30、ようやくジャスティン登場。豆粒サイズ。踊ってるなーくらいしかわからん!スクリーンはあるけど、もともと特別好きじゃないっていうのは、こんなに冷めているもんなのか。でも、まわりはめちゃくちゃ歓声。地震に近い。耳鳴りがして、気持ち悪くなってきた。

 フト思った。このライブが終わってこの万単位の観客が一気にベルシー駅に押しかけるんだよねえ。ぞっとしたわ。ライブ終わりは少なくとも23:00過ぎるだろうし、もみくちゃにされながらメトロにたどり着いて帰るのって・・・できれば避けたい。・・・というわけで、ライブ終了を待たずに私はとっとと出てきてしまいました。ごめん、ジャスティン。あんたは悪くない。ただの利害関係と音楽嗜好性の違いです。(いかにこのライブがどうでも良いかは、一枚も写真を撮っていないからわかるでしょ・・・。どうもわたしは“一般的に流行しているもの、王道的、ヒットチャート的なもの”がダメらしい。まあ、自分で知ってるけどさ。)
 それでもホテルに着いたのは23:30頃。みなさんはこんなに遅くに女一人でメトロに乗っちゃいけませんよ。

★3つのライブを見て・・・★

 超近距離PSB、ほどよい距離のルーファス、遠距離ジャスティン。3つのコンサートは、実はチケット代はほぼ同じだった。それなのに全然違う。当然だ、見るほうの気合いとゆるさが違うんだから。
 しかし、今さらながらここに来れた幸せを噛みしめている。ワタシはとても幸せな人間だ。(正直言って、そう思える時と、ワタシってなんて不幸っ!て思うことの繰り返し・・・。)

 なんとなくわかった。
 一般人である私達は有名人というものがどれだけメリット・デメリットがあるかなんて体験したことがないからわからない。むしろデメリットも多いのではないかと思った。
 ニールが昔インタビューで「自分が自意識過剰にならないのは僕にとってクリスだけ。クリスにとっても僕だけ。」といっていた意味がわかったような気がした。彼らはお互いにめったにいない“超有名人同士”だからこそシンパシーを感じているのだ。だからプライベートでもつるんでいるんじゃなかろうか。有名人同士のカップルが多いのもそういう気持ちがわかるからゆえではなかろうか。
 有名人にとって他人というのは、「完全なるビジネス相手」か「愛し過ぎのファン(あるいは、自分が知らなくても相手は自分のことを知っている)」の両極端なのだ。その中間、街ですれ違ってほうっておいてくれる人は少ない。彼らだって人間だから、気兼ねをしないとか、愛や仕事の介在しない人間関係が欲しいはずだ。常識的な人間なら、余計に。
 だから各地でライブに行って熱狂的に迎えられて愛されていること(=ビジネスが成功していること)を感じる分、振り子のように普通の人間になりたいはず。そのパラドックスに悩むこともあるのではないだろうか。もちろん、基本的には有名人であることに満足しているとは思うが。

 同じように、ファンである私も感情の振り子が大きい。
 とにかく感情のふり幅が大きく、アドレナリンが大放出されるときがものすごい。他のコンサートのように“ふつう”にコンサートを楽しむことができない。そこに彼らがいれば、脳も体もシビれまくり、じっとしていられないけど、いなくなってしまえばこの世の終わりのようなやりきれない寂しさが襲ってくる。
 ファン活動に見返りなどない、とわかってはいるけど、まるでそううつ病か、恋そのものだ・・・いや、どこがちがうのか。
 何でこんなに愛せるのかわからない!




 


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