ベスト版[POPART]
★ART部門★

 

 

 

 

「POP」からの続きです。
PVを見ると、常にその時代の最新技術を使っていること、音だけでなく、視覚的な色や形のセンスも超一流だということが再認識できます。個人的には[ART]の方が好みです。

 

 

 


1.レフト・トゥ・マイ・オウン・ディヴァイセズ(‘88)

 
プロデューサーがトレヴァー・ホーン(元バグルズのメンバーで、フランキー・ゴーズ・トウ・ハリウッドやタトゥーなどをプロデュース)ってだけでもPSBセンス。壮大なオーケストラの響くライト&ポップな曲ですが、内容はニールの子供時代をからめ、恋人と別れようかやめようかウロウロ悩む、やっぱりクヨクヨ系。また、曲中出てくる「チェ・ゲバラとドビュッシーがディスコダンスで踊っている」というフレーズが、彼ら自身を髣髴とさせる。ニールの語り風の歌い方も、曲もすごくいい!
 PVがとても面白い。全部下からのおしりショットで、ニールは動かず淡々と歌い、クリスはイヤイヤヘンなダンスを踊らされている(しかもずっと下から・・・)。その上を白いタイツの体操のおにいさんが飛び交う・・・ファンタジーでしょう。PVのDVDコメンタリーでは、クリスはほとんど笑っていて、なにがそんなおかしいかというと、ラスト15秒ほどにそれまで立っているだけのニールがステップ踏む(回るだけだけど)シーンがあって、それを「くるぞ、くるぞ、キターッ!」って大爆笑・・・。お子様のような純真さですね。ラストは“ジョージ&ギルバートみたいに芸術的”とコメント。そっかー,”J&G”って、美術界のPSBだなあ!(J&Gはとってもお下品なアートを作るゲイカップル。フランスのピエール&ジルみたいなもん。)

 

 


2.アイ・ドント・ノー・ホワット・
ユー・ウォント(バット・アイ・キャント・ギヴ・イット・エニイモア)(‘99)

 長いタイトルは「君の欲しいものがわからない・・・でも、もう何もしてあげられない。(君は僕を傷つけてばかり。)」という意味。ニールが恋人とのケンカの最中に作った歌(喧嘩中に書き留めて、また喧嘩再開・・・ってホントかね)。恋人に傷つけられてヨヨと泣く女々しい感じ。あ〜。もうそんな男とはとっとと別れようよ。
 ジョージ・ルーカスの「THX−13」のようなSFちっくな場所で、”老PSB”が人体実験のように生まれ変わるPV。ただし、生まれ変わった2人はヘンなカツラ、海苔のような眉毛、ロングコートに、スカートか袴にしか見えないキュロット着用。いつも絶対違うタイプのニール&クリスが双子のようにそっくりになり、そっくりな犬を2引き連れ、そっくりな子供2人に囲まれ・・・。んん?どういう意味?このへんてこスタイルが気に入ったのか、その後の2作でもこの海苔眉毛のまま、ライブでもこれで通した・・・。この曲の収められたアルバムには、「オータム・サムライ」という曲もあり、あきらかに袴は侍(おそらく彼らにとって、未知なもの)を意識していると思われる。

 

 


3.フラボワイヤント(‘03)

 
曲は21世紀を境に、テクノからアコースティックな感じになっている。ただ、この曲が日本で話題になったのは、PVが「欽ちゃんの仮装大会」をフューチャーしていること。ハアッ!?欽・・・ちゃん?・・・なんか、ビデオ見て気に入って、仮装大会出場に望む出演者を追ったものを使っている。おやじフューチャーだそうですが・・・こんなものも、彼らにとっては[ART]を感じるようです。曲の内容は、「人目を引いて、セレブ気分の人」を誉めたりおちょくってる。

 

 


4.ビーイング・ボアリング(‘90)

 この年のUKミュージックウェーブ誌のビデオ大賞受賞。ただし、彼らはいつもいつも、賞に意味なんてないと否定。(なにせ、曲そのものはシングルとしては全英20位と、最もセールスが振るわなかった曲)でも、曲にぴったりなすばらしいPV。聞くたびにノスタルジックな気分になり、泣けてくる。まあ、ほとんど2人は出て来ず、美男美女のモデルさんたちが半裸でワイルドパーティー催しとります。
 タイトル「退屈」は、日本のメディアに「PBSって退屈」と書かれたのが発想の元だそうだ。内容はニールの回想で、70年代によく楽しんでいたパーティーを想定しているらしい。「ただ、今は90年代・・・」、(エイズが問題になったから)もう、あの楽しいパーティーも今は昔だなー・・・って、どんな楽しいパーティですか。

 

 


5.キャン・
ユー・フォーギヴ・ハー(‘97)

 
複雑な構造の歌。PVは2人が赤い全身タイツでCGや街をウロウロするおもろい曲。彼女にいろいろ言われた男友達を、ニールがたしなめている歌。彼女いわく「ロックよりディスコミュージック(=PSB?)が好きなんて、あんたゲイでしょ?私はもっと男らしい人を探すわ」。そんな彼女を「キミ、許せるのかい?」といいつつ、「復讐するなんて子供っぽいよ。」とも。まあ、この彼女、ゲイをバカにしていますからね。怖いよ!ニールを怒らせると、このように歌にされて世界中に発表されてしまいます。
例えば有名なのが「恋に落ちた夜」(‘03)で、コンサート後、ファンの少年と一夜を共にするミュージシャンの歌で、はっちゃけ経験談かと思ったら、これはゲイを罵倒したラップで世間を騒がしたエミネムを想定した歌。少年の名前がスタン(エミネムの実在ストーカー)だったり、彼って素敵な男性、と嫌がらせラブコールを送り、見事エミネムを黙らせてしまった・・・いい曲なんだけどねえ。

 

 


6.ウエスト・エンド・ガールズ(’85)

 多くの人がデビュー曲だと思っている、最大のヒットにして、世にPBSを広めるきっかけとなった作品。まあ、彼らはデビュー前、「PSB」を名乗る前「ウエスト・エンド・ボーイズ」というユニット名だったから、彼らを代表する曲なことは確か。出だしが“時々、銃で頭を撃ちたくなる”ではじまるこの曲、内容が暗い(終末的、“(ロンドンの)ウェストエンドは世界のドン詰まり”といった、ペシミティブでダークな内容)だが、それも音が開放的なため、すんなりと受け入れられたような。日本でも即,CMソングとして使われていた。
 20年前の曲なんて、いま聞いたらたいていが「古いなあ」と思うのだが、この曲をはじめ、PSBの曲は全然古く聞こえないんだよね・・・。やっぱりすごいなあ。
 当時のPVでのニールの服装がニューロマンティックのような化粧・肩パット・ロングコートだったので、勘違いする人は多かったが、実際はテクノポップです(まあ、今となっては同じようなものか)。なぜかクリスは半透明に映っております。理由は不明だが「クールだろ」と、クリス談。

 

 


7.アイ・ゲット・アロング(’02)

 
恋人のもとを寂しく去る歌にも聞こえるが、実は英国首相ブレアのもとを去った、当時ブレアの右腕だった政治家ピーター・マンデルソン(←なんかこの人もイケメンですが、世界初のゲイEU欧州委員らしいっすよ・・・)との心情を歌ったもの。とてもイジワルですね。クリスは特にブレア嫌いで有名ですが、実際にマンデルソンから電話で感想を聞かされたらしいです(笑ってたらしい)。嫌いな奴は仲間(ゲイ)に引き入れるってのが、彼らの批判の仕方です。
 半裸の美青年が桜の下を走る、ものすごくゲイっぽい映像から始まるが、PBSにも若さへの憧憬が?911テロ後のニューヨークで、アートスクールの若い学生たちとコラボする様子が撮影されている。「若い人たちと一緒は楽しい」と、素直なおっさんの感想でした。2人が口を合わせて「あの子は本当に綺麗だった!」というロシア人モデルの女の子が、本当に人形みたいにかわいいです。
 PVには、ニューヨークへの愛をこめた「E-MAIL」も続けて収録。メロウ・・・。この曲は「ホーム&ドライ」の続きのような曲。“いま遠くにいる君を思う・・・。すぐに飛行機でそこに行きたいけど、せめて”愛してる”ってメールを送ってくれればガマンする。”というわけで、最新ツールも愛の小道具として登場するわけです!

 

 


8.ソー・ハード(’90)

 
ハードな導入部から急激にメロウな曲に衝撃的に変化する名曲(マイランキングベスト3入り)。まあ、内容的には「難しい」という意味だが、自分の不誠実を棚に上げ、相手に誠実さを求めすぎる恋愛を歌っている。ニールの友人の同棲ゲイカップルの実話に基づいていて、「健康のために一緒にタバコをやめたはずなのに、ベッドの横にマッチが落ちていた」「出会い系交際誌見てたじゃん!」という細かい視点で語られている。別れちまえ!(忠告2回目)。
 PVでは若い4人の男女を見ている2人は部外者的に扱われているが、いつもの歌うニール&立ちつくすクリス(&黒人ボディガード2人)という構造はこのあたりからかな。ラスト、海岸で終わるショットが美しすぎ。ニールの青春を過ごしたニューカッスルで撮影も行われている
 音的には、12“盤にクリスが「ソー、ハード・・・」(か、硬いわ・・・)というエロ音源をサンプリングしたらしい。ライブ(「パフォーマンスツアー」)でのこの曲、2人は上下ピチ目の黒レザーというただでさえ眩しいスタイルなのに、某公演では股間にバナナを入れていたという(で、ファンレター殺到!)。ナニやってんですか、あんたたち。

 


9.レント(’87)

 
「悲しみの天使」同様、デレク・ジャーマン監督。歌は家庭に縛り付けられた女性を想定しており、「あなたが家賃(=レント)を払ってくれる限り、愛している」という、皮肉な歌。PVもそれに準じ、お屋敷のマダムが夫から逃げ出し、彼女に横恋慕する運転手(ニール)の車に乗り込み、夜の駅に向かう。駅では、電車から若い男(クリス)が降り立ち、二人は抱擁&キスをする・・・が、どんな関係?若い愛人?・・・コメンタリーで発見。姉と弟という設定だそうです。わかんねーよ!ちなみにコメンタリーには、撮影時クリスが駅で待ちぼうけをくらい、2時間待たされて家に帰ってしまったこと(撮影日時が変更されたことが伝わっていなかったらしい・・・おしえてやってよ!)など、興味深い話が聞けます。
 ただ、彼らが歌うことにより、「レント」=「男娼」「愛人」の意味ももつ。現にPVでは駅に男娼役の若い俳優を配した。

 

 


10.ジェラシー(’91)

 
‘91発表ながら、実際に作られたのはデビューはるか前の’82、ほぼ最初の曲だとの事。クリスが自宅(ブラックプール)でチャイコフスキー(ロシアの偉大な作曲家、隠れゲイ)とチャネリングして作った、と意外に不思議ちゃんなところをニールに暴露されている。内容は恋人に対するダイレクトなジェラシーそのまんま。PVではレストランで繰り広げられる男女カップルの浮気物語。オーケストラを音源としているのでレストランでクリスがピアノを演奏している(楽器を弾くのは意外に珍しい・・・ライブでもそんなに弾いてないし)。クリスの当時の恋人(亡くなったピーター・アンドレアス)がPVに出演しているらしいが、多分最初にシーンで入り口近くに座っている白トレーナーのボウズのお兄さん。

 

 


11.DJ カルチャー(’91)

 
湾岸戦争時、衛生放送網が確立し、TVで何でもかんでも中継されてしまうことをおちょくった歌。PVでは戦争中継、サッカー、法廷中継などに載せて、2人のいろいろなコスプレが楽しめる。マドンナやリズ・テーラーをおちょくった場面もある(人工的ですもんね、あの2人は)。ニールのサッカーの審判コスプレはすごいはまってる。こういう人、いそう。ニールはカツラかぶって法廷で「神よ、私は何も話さない。」と言っているが、これは、オスカー・ワイルドがゲイ裁判で実際に言ったことです。

 

 


12.ユー・オンリー・テル・ミー・ユー・ラヴ・ミー・ホエン・ユー・アー・ドランク(‘00)

 
「君が僕に”愛している”って言うのは酔っているときだけ」なんて、演歌のようで女々しいタイトルだが、なんとニールが実際に昔の恋人に言った経験から作られたそうだ。クリスが「すごくニールっぽい!」と言っているから、やっぱりニールはああ見えてかなり乙女だと見た。ただ、ニールは「クリスが気に入るだろうな」と思ったとも。クリスがタイトルをつけるなら「愛していると言ってくれ」になった・・・素直。曲もとてもメロウで、ココロに染みちゃう。あれこれクヨクヨと思い悩むキュートな乙女ココロは女性ボーカルでもいいかも。PVは”PSB”を探せ!みたいな感じで乱交っぽいな。へんなウィッグ+海苔眉毛だけど。

 

 


13.リベレイション(’94)

 恋愛における「自由と束縛」を歌った曲。結婚という制度に縛られない自由と不安感ともいえる。ものすごく素直でいい曲。ひねりや皮肉はなんもなし。ただ、愛する人がそばにいてくれるだけで幸せを感じる、まさに全人類につうじる、永劫不変、恋愛真っ只中の歌。PVは生の2人は登場せず、フルCG。ブルーとオレンジのコラボが2人をあらわしているようだ(クリスはこんな素直な歌でも性愛的なものを感じるらしいが)。

 

 


14.パニナロ95(’95)

 
クリスがヴォーカルの稀少品で、ほとんどクリスに任された曲。クリスの声はニールとは正反対に渋くてイケる。パニナロとはイタリアのブランド好き若者のこと。PSBもかなりのブランドにこだわりがあると思われる。もともとはB面(カップリング)・アルバム未収録だった’87の曲を新たに焼き直し(クリスファンは飢えているのだ!)。オリジナルの「パニナロがすべて」のPVでもクリスは踊っています。ほとんどがラップだが、歌詞がちょっとオリジナルと違う。しかもリーフレットの歌詞も間違っている問題作(?)で、途中のラップも歌詞カードから落ちているが、ウェブサイトから拾うと、デスってんではなく、自分のもとを去った恋人に対する寂しい悲しい、燃えるような訴えだった(涙・・・’94年に彼は、彼の同棲中の恋人をエイズで失っている(「クリスLOVE」のページ参照)。
 PVは半裸のマッチョマンがクネクネ踊る、PSBでもっともゲイっぽい1本。最初にこれ見たらグレるかも。ニールはそそり立つサボテンを見て「どういう意味?」だの「ゲイのエロ」だの嬉々としてコメントしていますが、クリスは始終コメント拒否。作品が全て。ちなみにこのニールは溶けたりしているので、本人いわくフランシス・ベーコンの絵(ゲイの画家。ニールのミドルネームもフランシス)。Mr.スミス似なので、「マトリックス」に見える。もちろん「マトリックス」の4年前。

 

 

 

15.オポチュニティーズ(‘85)

 
デビュー曲。ただしヒットしたのはセカンドシングル「ウエスト・エンド・ガールズ」のヒット後の再発売バージョン。PVも2種類ある。最初のほうはニールはめちゃ細いし、クリスはアイドルのよう。内容は「俺は頭脳がある、お前はルックスがいいから、一緒に大金をかせごう。」という、デビュー曲にあるまじき内容。ただし、これは彼らなりの芸能界に対する皮肉である。インパクトはある。ちなみに私は当時高校2年、このデビュー曲をFMで聞いてショックを受け、今でもそのエアチェックしたテープを大事に持っているのであった・・・20年後のために・・・。

 

 


16.イエスタディ・ホエン・アイ・ワズ・マッド(’94)

 
いつも冷静なニール、コンサートツアーでキレるの巻・・・。だって、「わかった風なことを言われる」と、「殺意を抱く」って言ってるんだよ。まあ、彼らも当たり前にいろいろな苦労があるわけですよ。PVにはクリスがまったく出ていないが、ニールの一人舞台。廃墟の病院に監禁され、ご無体な扱いを受ける彼。ホラー・コメディのよう。ああ、セレブって大変。私のようなものも含め、地球の隅々からいろいろな間違った感情を寄せられる彼らですから、少しはほうっておいてあげたくなりますね・・・。PVにクリスは出ていません。

 

 


17.シングル(’96)

 
「僕は独身、バイリンガル」と、ニールがビジネスマンに扮して楽しく歌われるミュージカル仕立てのPVが面白い。セレブ・ミュージシャンというより、ニールはビジネスマンに見えるもんね。クリスは空港の警備員だが、棍棒フリフリ、セクシーすぎてある意味コスプレ(ジョージ・マイケルの「アウトサイド」を髣髴とさせる)。ラスト、ビルの屋上に巨大戦闘機がやってくるシーンはなかなかに圧巻。アイルランドの女性サンバ・ドラムのグループとコラボしていて、ポップな仕上がり。

 

 


18.サムホエア(‘97)

 
97年にロンドンの由緒ある劇場「サボイ劇場」で催されたコンサート・ライブ「サムホエア」の映像を元にPVが作られている。バックステージの素顔に近い2人が見られるのがうれしい(この様子は「サムホエア・ツアー」としてDVD化されている)。想像通り、ニールは隅々まで仕切り、休む暇もないが、クリスは寝転がったり紅茶を飲んだり、のんびりしているわけです。どうでもいいのですが、ステージではめちゃ若いクリスが、舞台裏でダラダラしている様子がものすっごいおっさんに見えるのがすごく気になります・・・。また、ラストのカーテンコールで、ズボンを下ろしているのも気になります。
 曲は、「ウエストサイドストーリー」のためのカバーです。

 

 

 


 


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