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♪♪妄想乙女マーガレット通信★vol.49♪♪
別冊「まりりんの日記」/ペットさん(ペット・ショップ・ボーイズ)偏愛フリーペーパー
第49号・2007年2月発行★発行人:まりりん石原、執筆乙女:マーガレット(題字:ニール王子)

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シリーズ:1曲に固執してみる・5▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 
「1曲を徹底的に研究してみる」第5弾。今日はいつもクール&エレガントなPSBワールドにありながら、一風変わった“男くさい”1曲「Track driver and his mate」トラック運ちゃんとその仲間(’96)。(シングル「Before」カップリング、「Further Listening ‘96-‘97」収録)。地味ながら、とても気になります。

(この曲については)「う〜、もう何とでも言ってくれ!」(byクリス)
 (「
Nightlife」ツアーパンフレットより)

 A面「Before」が収められたアルバム「Bilingual」は、PSBらしくない音がたくさん使用されている、異色のアルバムといえるだろう。この「Track Driver and his mate」も、ライブ「Somewhere」ではニールがアコ・ギタを抱えて疲労したように、アコースティックが混ざりながらも、グラムロックに限りなく近い(奇しくも同年、PSBはかねてからの憧れのグラムロック・スター、デビッド・ボウイとのコラボを果たしている。すっかり地球人に帰化したボウイを再び宇宙に戻すよなキラキラな曲「Hallo space boy」は、PSBのライブ「Somewhere」で「Track Driver…」とともにパフォーマンスされている。ただし、ボウイは抜き、ボウイのパートはシルビアが歌い、ドラーグしたダンサーがステージで踊る)。
 この曲のタイトル「トラックドライバーとその仲間」は、日本で言えば演歌チックでなんとなく任侠的な世界(多分)とバディ(相棒)ものが「トラック野郎」を思い出させるけど、海外では汗臭くたくましいホモエロチックなアイコンを連想させる。フランスのチョイ悪エロオヤジ、セルジュ・ゲーンズブールの撮った映画「Je t’aime moi,…non plus」を、私は思い出す。映画のテーマは“ゲイと女性の不毛なセックス”。この映画に出てくるトラックドライバーと彼の連れはゲイカップルで、立ち寄った町で出会った、少年のような女性(ジェーン・バーキン)とトラックドライバーの片割れが、不毛の肉体関係を結ぶ話だ(ちなみに”mate”には”(つがいの)片割れ”という意味あいもある)。PSBがこの映画からヒントを得たかどうかは不明だけど、後に同名主題歌「Je t’aime moi,…non plus」はカバーしている(ただし、全く違う曲になっているけど!この曲をクリスが歌っているところがなんとなく意味深なんだけど)。
 この曲についての2人のコメントを聞いてみよう。

ニール「このタイトルは、何年か僕のノートにあった。ヨーキー・チョコレート・バーの広告に“トラックドライバーとお仲間も大満足”とか何とか書いてあったんだと思う。ロック・トラックにしようというのはクリスのアイデアだ。」
クリス「音楽は完全にオアシスの“Some might say”のパクリだね、多分。とにかくそれが始まりだ。」
ニール「信じられないほどスタンダードなロック・コード・チェンジだ。」
クリス「僕らはオアシスやロックの転向にそそられていたね。ロック・レコードみたいには聞こえないけど。でも、僕らがそう思ってたかはわからない。いつもB面だったからね。」
ニール「ロッキー・レーンにやられたんだ。そうなるのは面白かった。僕らはロック・ギター・コードのサンプルを使った。それから、“ow-wow-wow”はすごくT-REXっぽい。僕はアコースティック・ギターを弾いているけど、本当にグラムロックっぽい“solemn as an act of fate(運命の行為のように厳粛)”なんてデビット・ボウイの歌詞みたいだ。これ、オリジナルのフレーズかな?誰か知ってる?男同士の絆についての歌だ。“トラックドライバーと仲間”というフレーズの1区切りにホモエロチックなものがある。2人が月明かりの中で一緒にダンスするのをイメージした。ロマンチックなものがあるだろう?」
クリス「ホントの月明かり?」
ニール「そう、本当の月明かりだ。今、販売促進用の12インチのこのコピーがある。これが"Before"のB面としてリリースされたとき、ロンドンのPopstarsのようなインディーズ・クラブでかけ始められた。それでEMIはこのトラックのプロモをいくつか出すことを決定した。"Before"のプロモに、萎えたペニスを据えて、その下に"Before"の文字がある。まさしくジョークなんだけど。目覚める”前”だ。アメリカでは、レコード会社がそれをいたく気に入って、彼らはそのジャケットでそれをリリースしたがった。僕らはその考えにぞっとしたね。僕らは実はとても上品ぶっていたのさ。とにかく”トラックドライバーと仲間”のプロモには、別のものの横にもう一つ、ペニスを繰り返してやったんだ。」

(「Further Listening ‘95-‘97」ブックレットより/マーガレット訳)

 問題の”ペニス写真”プロモ・ジャケットは販売こそされていませんが、アートワーク本「PSB Catalog」(‘06発売)で見ることができます。実際に見ると、卓越なるギャグセンスに驚嘆しますよ。
 ちっちゃく写真、載せておきます。左が「Before」、右が「Track driver and his mate」。文字の入れ方もギャグですね。


 ちなみにニューカッスルは、ニールが少年時代を過ごしたイングランド北部の町。炭鉱で有名。
(マ通信vol.25に「ニューカッスル妄想旅行記」あり)

 

待避所に駐車して
目的地を待たせて
月明かりの中でダンス
トラックドライバーと、パートナー

無理を通して
時間外に荷台に座り

 


ニューカッスルから石炭を運ぶ道すがら
男同士で語る

夢中なほど忠実で
運命の行動のように厳粛に
月明かりの中でダンス
トラックドライバーと、パートナー

(マーガレット訳)

 

★★★★★★今日の写真★★★★★★★★★★

 

 最近、最も気に入っている写真。
見てくださいよ、このニールの満面の笑み!!かつて”笑わない”のがトレードマークだったとは思えません。
 笑顔は本当にヒトをハッピーにします。クリスの控えめな笑顔もかわいいです。
 恐らく仕事の打ち上げかなんかでしょうが(でも2人はプライベートでも遊ぶので、わかりません)、この2人、音楽という仕事に就けて、本当に楽しそうなんですよね。いつも幸せなんですよ。その幸せのカケラをいただきたいものです。

 


★★★★今日の関係者★★★★
ザ・キラーズ

 アメリカ、ラスベガス出身だが、イギリスのレコード会社からデビューしたため、活動拠点はイギリス。04メジャーデビュー。ブランドン・フラワーズ、デイヴィッド・キューニング、マーク・ストーマー、ロニー・ヴァヌッチィの4人組。バンド名はニューオーダーの「クリスタル」のPVに登場する架空バンド=The Killersから拝借したものだという。音楽形態はシンセサイザー+ロック。


おひげのブランドン(右から2番目)

ラスベガス時代は、ゲイクラブで演奏していたという、ザ・キラーズは少なくとも親ゲイ派。
 アルバム「Sam
s town」からのシングル「Bones」のPVはティム・バートンが監督をして話題になった。
PV(http://www.youtube.com/watch?v=US8f-q7U_wM)デヴォン青木主演です。
3rdシングル「Read my mind」のリミックスはPSBが手がけている(ニール&クリスのバッキング・ヴォーカルが入っているとか!)。交流のほどは定かではないが、去年放送&発売されたPSBのドキュメンタリー「Life of pop」に、ボーカルのブランドンが出て、ファンだと発言しているので、おそらくPSBファンというつながりなのだろう。以前、ニールがブランドンに「ヒゲが似合わない」と言った(でも、今もブランドンにヒゲあり)。この「Read my mind」のPVは、1月に来日した際に、日本の街中で撮影されている。
PV(http://www.youtube.com/watch?v=Ch3hppFG3UQ
 
04にフジロックに出演以来、日本でも知名度が高まった。05年にグラストンベリー出演、ニューオーダーやU2のライブに飛び入りするなどの活躍ぶり。「007」の次回作のテーマ曲、ジョイ・デビジョン(ニューオーダーの前身)の映画のテーマ曲を手がける予定など、いろいろ話題になっている。


★★★★★★★★★★★★★コメンタリーby PSB Catalog@★★★★★★★★★★★★★★

06年発売されたアートワーク本「PSBカタログ」掲載の「Pet Shop Boys in conversation with Chris Heath, April 2006」を訳してみました。ちと長いので、また連載になると思います。

このビジュアルの歴史全体を振り返って、何が一番印象深い?

ニール「すごくたくさんのレコードを、僕らは発表していたんだね。20年以上の一区切りで、いつも何かが進んでいた。ピンキリだと思うけど、それに多くの努力がなされていることはわかるでしょ、決まりきったことなんかじゃなくて。僕らはものごとを変えるために働のエネルギーを切らしたことなんてなかった。僕たちは常に、ビジュアルの側面の重要性をかなり尊重していた。」

クリス「面白いことに、僕らはスタートした時みたいに、今でも若く見えるよね。」

ニール「僕は全然そう思わないけど。でも今全体的って言われているように、僕たちは全体のプロジェクトを見わたした。もちろん、80年代にビジュアル面はとにかく、すっごく重要だった。それで、僕たちはそれをとにもかくもやっただろうと個人的には思うけど、それは、僕がスマッシュ・ヒッツから同じ様に来て持っていたものであると思う。さらに、エリック・ワトソンと働いたことを思うと、僕たちは、僕らの3人の間でポップ写真のスタイルでなかったポップ写真を撮る考えを共有した。ペット・ショップ・ボーイズのインスピレーションの一部は、常にポップ・ミュージックの外からのものをポップ・ミュージックにもたらすことだった。エリックは多くの写真のセオリーや彼が興味のある歴史を持っていて、彼はこれに利用したかった。おそらく僕らが知らないものもある。特に初期の”Opportunities”の写真撮影会でそれを見ることができる。そこで、僕らはイースト・エンドとエリックのスタジオで2日を費やした。僕たちは、その時に他のポップスグループとは違う、僕たちを際立たせるものを明確にしたかった。僕たちがそれらの写真をライムハウスで撮ったとき、まさにライヴ・エイド、ワム!、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、スパンダー・バレエ、デュラン・デュランの後だった。ポップ・ミュージックはこの時、皇帝時代に思える…壮大でワールドワイドに過ぎ去った。僕らは完全に異なった方向から来たようなものを求めていた。それは、重要性の一種の質、それに関するある種の尊厳があった。たぶん、ある種の厳格主義でさえある。僕のホンブルク帽子のそれらの写真やあらゆる写真のなかで、一種の厳格な質を持っている。また、それは全く慎重だ。僕らが”West End Girls…East End Boys”と書いたから、ウェスト・エンドにいるものもある。でも、僕らはもっとイースト・エンドにいたと思う。それは80年代なかばの音楽の魔力からの分離を表していたと思う。」

ウェスト・エンドとノッティング・ヒル・ゲートのどちらかで起こっていた

ニール「そう、まさしく。音楽の中で通り抜けて続いた。僕とクリスは本当に音楽のリアル・サウンドに魅了されていた。”West End Girls”は、誰かが通りを下って始まり、ストリングが入り、映画の導入部のような音がする。ある種類の不思議なイタリアのフィルムのスチール写真のようにイメージしたかった。スチール写真を買うことの出来るショップがブリュワー・ストリートにあって、僕が働いていたスマッシュ・ヒッツのすぐ近くにあった。僕はかつてははまり古い雑誌やスチール写真にざっと目を通して使っていた。」

続く


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