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margaret
♪♪妄想乙女マーガレット通信★vol.♪♪
別冊「まりりんの日記」/ペットさん(ペット・ショップ・ボーイズ)偏愛フリーペーパー
78号・20097月発行★発行人:まりりん石原、執筆乙女:マーガレット(題字:ニール王子)

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PANDEMONIUMツアープログラム▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

Pandemonium
ツアープログラム(by Chris Heath)の日本語訳です。

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200963日。イーストロンドンの3 Mills Studio。昼前。これから1週間後、ペット・ショップ・ボーイズのPandemoniumツアーの最初のショーが、ロシアのサンクト・ペテルスブルクで行われる予定だ。この練習場で、やや混沌とした練習は、いくつかの方法で進められている。 ステージエリアは…実際のステージではないが、練習場の床にカラーテープで長方形がマーキングされていて…大きさで分けられた様々の白い箱で散らかっていて、いくつかは不規則に、いくつかは規則的に積み重ねられている。それらに、赤い格子の正方形やたくさんの奇妙なセットが映し出される。これらは、ショーの映像自体というよりむしろとても興味深い映像に関する準備のプロセスの一部に見える。箱の正面では、2人のダンサーがいくつかの動きの練習をする。それぞれは、立方体を頭にかぶっている。一つは緑色、一つは青だ。


さらに、クリスが彼のキーボードを収納してある白い長方形の箱の中に立っている。これはこのツアーの革新の1つで、いくつかの小さい電子ドラムだ。たった今、彼は“Do I have to?”のイントロをソロでプレーしている。これは“Always on my mind”のB面で、今のところPandemoniumツアーのセットリストにおけるいくつかのサプライズのひとつだ。これは“Kings Cross”のイントロへの先導だ。それぞれの歌のために、彼はキーボードにテープに録音されたリストの、曲のキーを書き留める。“Kings Cross”の終わりで、彼は止まって、電子ティンパニーを披露する。ショー全体に関して、彼はポツリと「僕は、それが良くなるなら、やろうと思う。」と言った。彼がすぐに引き下がる言葉がある。まるでそのような無謀な楽観主義が彼の唇から零れるのを聞いたために呆然とするかのようだ。「それを言うのはやめよう。僕たちは運命を誘惑する必要はない。」 とにかくそれは未来のためだ。彼はもっと多くの差し迫った事に関心を向けた。誰かが彼のティンパニー・スティックを置くための筒を選んだ。それは青いヒョウ柄のようなモチーフで覆われている。「これで行こう。」と、彼は宣言する。まるで、彼がそのような残虐な美的センスを是認するとか、許容するとかを想像できることを誰もが心配するかを予測するように。「ヒョウ柄ドラムスティックの所有者。僕は驚いた。」彼はお気に入りの新しい作品の設備を見た。「時間については、誰かがちょっと僕に投資した。」それは、KAAOSパッドと呼ばれる小さい箱だ。一番上の面は直径数インチの小さい正方形の面だ。「まるで」クリスは言う。「ミニ・ダンスフロアだ」。それは赤みがかっていて、より明るく光り、そしてKAOSSは、それを通して入れられている音はどれでも、どんなものでも、誰かの指で、変え方を決定できる。

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ペット・ショップ・ボーイズのウェブサイトのいくつかのデザインを目立たせている新しい処理中の作業を上の階で行っていたミーティングから、ニールが戻った。彼は不十分な状態で(「気持ちは落ち着いている」と、彼は説明する「でも軽くないね。」)そして、考えて、この新しいショーのロジスティクスについての最新の危機を考える。「全体について」は、ツアー・マネージャーのAndy Crookstonは、略言する。「重過ぎて、大き過ぎる。そして高価過ぎるということだ」。今日の命題は、ショーのツアーのインフラストラクチャの重さを、9トンまで減少させることだ。かつてのクリスの初期の提案(「そう、僕たちはクルーの何人かを減らさなければならない。みんなが重すぎる)は無視されて、いくつかの根本的な可能性が邪魔している。「僕がロック・ショーで見たように、どこにもないような完全に驚くべきものにしたい。」 結局、ステージの両端の2つのキーボード・ブースが再設計されて、規模が縮小されることが決定した。現在、クリスのブースだけはVersa Tilesとして知られるものが並べられている。それは特別なクオリティがショーの間で表現できなければならない(「クリスの方は大成功だ」と、ニールは付け加える。「それはDJブースのようで、完璧だ。」)。しかし、それは絶え間なくフラストレーションが溜まる。創造性と実用性の間での終わりなき小競り合いがある。 議論から離れて、ニールは「いくつかのショーは僕の頭の中でやっている。」とつぶやく。

更なる決定を待たなければならない。ペット・ショップ・ボーイズに食事時間を取ることの重要性は、架空の話ではない。
彼の声で「110分を過ぎた!」とクリスが、恐切羽詰まったような声で主張する。「ランチタイムだ!10分遅れてる。お腹が空いて当然だよ。」
スタジオの敷地を通り抜けた場所が食べる場所がある。ニールとクリスが最近、リハーサルの間、違う日課を採用した。昼食に関して彼らは、運河の近くにある巨大なテスコまで歩いて行って、昼食のためにスーパーマーケットの通路を眺めて、それからスタジオに戻って、彼らがピクニックと呼ぶものを食べる事が気に入っていた。(それは、ピクニックというにはあまりにもお粗末で、例えば、芝生も敷物もバスケットもなく、倉庫のワン・コーナーに急拵えしたテーブルで立って食べるだけなのだけど)

「僕は、なぜこれらのショーを計画しているかを知らないんだ。」店へ行く途中、ニールは続けた。
「なぜステージの上に僕たち2人だけがいるんだろう。」クリスが言う。(彼はこのことを言ってない。) 「僕は、なぜ上着を着て来なかったんだろう。」と、彼は言い足す。 (彼はこのことを言っている。)
テスコでは、ニールは、スコッチエッグ、フムス (ユダヤ料理のひよこ豆のペースト) 、チーズ、Daily Telegraphを買った。それは、こんな単語によって引用された記事の見出しに引きつけられた…「Martin Amis、彼が裏切った恋人、私が崇めた見栄えのいい若者」。クリスは蔓に乗ったトマトと、加工肉のセレクションを買った。共同でフランスパンを買う。しかし、ニールがフムスを見つけるために一人で何処かに行ってしまったので、彼らは互いを見失った。クリスはあちこち歩き回るけど、ニールを見つけることができず、結局、ニールは電話をした。ようやく彼らは再集合した。
歩いて戻り、彼らはいろいろなクルーのメンバーたちと挨拶した。そのメンバーたちはいつもクルーが着ているような服を着ていた。
「半ズボンが全てでしょ、ツアーでは?」と、クリスは注目する。

「半ズボンとサンダル」と、ニールは言う。「それが外観さ。」

マンチェゴ・チーズの外パッケージを破く奮闘の後、中庭に置いてあるフライト・ケースの上に座って、本日の昼食を取る。このツアーのバックグラウンドに関して語るには数分かかる。彼らは、前のツアーと同じディレクターのEs Devlinと一緒に歩いている。ペット・ショップ・ボーイズが音楽功労賞を受賞して、ショーの最後で9分のメドレーをパフォーマンスしたとき、この2月のブリット・アワードで彼らとコラボレーションして引き続きこのツアーを監督する。さらに舞台のパフォーマンスは振付師Lynn Pageだ。 「僕たちはブリット・アワーズでのダンスがすごく気に入った。」と、クリスは言う。
「僕たちには、アルバムのフロントジャケットの正方形を立方体にするというベースの考え方があった。」と、ニールは言う。「で、Esは非常にフレキシブルな、全部の箱のアイデアを思いついた。僕たちがツアーで抱えている問題の1つは、いくつかの非常に大きい会場でプレーするということだ。ロック・フェスティバルでもプレーするし、いくつかの小さい劇場でも、中規模の劇場でもプレーする。いつも異種のステージで融通がきくショーを開かなければならない。野外で、屋内で。全く、率直に言ってそれは悪夢だ。」

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君がロックグループであるなら、大部分、君がどれくらい離れてマイクスタンドを置くかどうかとか、最悪でも、君の背景が合うかどうかの問題だ。しかし、シアトリカルな局面があるパフォーマンスを熱望するとか、パフォーマーが相互作用するツアーの舞台装置があるとか、三次元に働く較正された視覚光景があるとかならば…21世紀にさえロックバンド・ツアーの世界で快適な状態に合わない全てのもの…もっといろいろなことが関わるようになる。この複雑さ、柔軟性、重さ、品質、明快さと妥協は、初演の夜までだけではなく、しばしば長くペット・ショップ・ボーイズのツアー議論を支配する傾向がある。

最も長いバージョンの、Pandemoniumショーは、4つのアクトに分けられる。私(クリス・ヒース)は、彼らがその理由について説明できるかどうか尋ねると、「さあ。」と、クリスは言う。 歌を選ぶために、彼らはプロデューサーのStuart Priceと、Spotifyで自己のカタログを溯っていた。彼は、匿名のように見えて彼らを助け、新しいアルバムYesが優先された。彼らが「ニューヨーク」と呼ぶ第2セクションは、ニューヨークで作品を書いた彼らの初期へのオマージュで、彼らがこれまでツアーで一度も演奏したことがない自己のファースト・アルバムからの2曲を含んでいる。「バレエ」として知られる3番目は、「Do l have to?」と 「Kings Cross」で始まるセクションだ。最後の「セレブレーション」は、理由が明白になることを意図されている。

彼らが選んだ曲を、そのユニットにした理由を尋ねると、ニールは「それが気に入った」とだけ答える。「ここにはダフ・トラックがない。」とクリスがさらに言う。
ニールは、「多くの歌が層になっているから、実際にそれを聴かなくても、次の歌のヒントを得ることができる」と付け足す。

「曲のいい一部分だけを聴けば、それはDJ的なやり方だ。」

「ステージでは何をする予定?」

「僕は歌うつもり。」とニールが言う。

「時々、ちょっと振付のダンス。ずっと踊っていると言う訳じゃないよ。」

「僕はキーボードをプレイして、あと、ドラム。」クリスが言う。

「何故ドラムを?」

「キーボードからのチェンジだ。」

「ファンにショック・ウェーブを送るつもりだ。」ニールそうは言って、動きを止めた。

「ゴッド、これはすごくいいバナナだ。」彼は断言する。「ビューティフル。」そして、ツアーに戻る。「僕たちは、すごい衣装を着るんだ。クリスなんて、すごく驚く衣装だ。」

「ミラー付きのコートをね。」クリスは言う。「着るには地獄だ。すごく彫刻的。全部が鏡で作られているんだ。舞台の上では、すごく良く見えると思う。今回の一回きりだ。Jefferyのオリジナルだよ。」

「僕には違った衣装が3着。」とニールが言う。ブリッツで来ていたGareth Pughのコートで、彼が復活祭の時、ベルリンでルーファス・ウェインライトの最近のシェークスピアのソネットのプロジェクトを見たときに思いついたエリザベス朝の洋服がアイデアの元になった。

どんな反応を聴衆にして欲しい?

「ワイルドなヒステリー」と、ニールは言う。

「あなたは皮肉たっぷりの返事を期待してる?」と、クリスは言う。「僕たちは、みんなにマジで一夜の経験を楽しんで欲しいと思う。」
クリスが屋内に行くと、ニールの携帯が鳴った。トレヴァー・ホーンだ。彼はいくつかのボーカルを秘密のプロジェクトに追加できるかどうか尋ねて来た。

彼は中で迷っていたが、数分後、エス・デヴリンが電話して来た。彼女はTake Thatの夏のスタジアムショーに取り組んでいるので、今日はここにいない。

彼は‘ビジョンの防御'に関して彼女と話し、彼らは、この演出が風の強い野外のフェスティバルで直面するであろう特別な問題を克服するためのアイデアを話し合う。
ステージエリアの横で、リンが叫ぶ。「‘Suburbia’の位置について!」

ニールは普通じゃないステージ・セットを見渡した。彼は「これはアートだって、分かるよね」と笑った。それから付け加えた。「それは芸術か芸術家気取りかは、僕たちについてのMichael Bracewellの有名な引用文だ。答えがどっちかと言うと、‘それは芸術家気取だ。」

部屋に戻ると、Pete Gleadallがいた。彼は音楽の大部分の責務を任されていて、間に合わせのスタジオでは、いつものように彼が奥の部屋でセット・アップしていた。彼はさらに、バッキング・ボーカルを歌うショーの4人のダンサーと一緒に忙しく働いていた。
「クリスには、大変な時間がある。」彼はそう述べて、クリスがワンポイントで、特に難しいマスター・キーボードの両手弾きに言及した。「左手はマスター・キーボード、右手はMoog、というRick Wakemanスタイルだ。」これは、クリスが自分で言う事はありそうもないとちょっと思う。一般的に、人々は、彼が何もしていないと信じているのを許容するよりも、妙技を表現することの方を恥ずかしいと思っているようで、彼はいつもそういう風に行動しているのだ。

 

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たった今、クリスが仮眠室に姿を消した。ニールはダンサーと「Suburbia」と「All over the world」をやっている。彼は、ダンサーが「All over the world」の終わりでステージの前方に来てはどうかと提案する。 通し稽古の間、彼は、Unicefがその歌を採用したキャンペーン・フィルムのラフ・バージョンを送ってきたことを話した。 (ペット・ショップ・ボーイズはこの素晴らしい熱意を受け入れた。彼らはスクリーンの上で使う活字体の問題を抱えていた。)
It’s a sin」のリハーサルが始まった。
リンは、「‘Father forgive me’をやって見せてくれる?」と尋ねた。
クリスが生き帰って戻り、彼らは「West End girls」をプレーする。クリスは、この歌のバス・ラインのピアノ・パートをコンサートで、自分自身で演奏するのは今回が初めてだと言う。理由が尋ねると、彼は肩をすくめる。 「ただ単に、明らかにやるべき事に思えた。僕たちには、ミニMoogがある。Moogは、ファンタスティックでうるさいバス音がするからね。」


「もう1回」リンが叫ぶ。

OKOK」と、ニールが言う。 「もう一回だ、ボーイズ・アンド・ガールズ。」

クリスはアンコールで着る衣装がまだ揃ってないことに苛立っていた。「だって、僕には買い物に行く時間がないんだ。」と、彼は不平を言う。
「セルフリッジをひとまわりしたんだけど…」ジェフリー(ジェフリー・ブライアントは、もう一度このツアーでワードローブを担当している)が彼に言った。「でも、そこはパステル・カラーばかりで。」彼は、クリスが好きそうないくつかのジーンズの写真をクリスに見せている。 再度クリスは、余分なポケットが脚の何処にもないのを確忍すると、最近よくするように、気に入ったものに賛成する。しかし彼にはまだ、着るトップスがない。 ニールはあれこれ考えるけど、提案するものが全くない。
「良い服が全然なくて、それが問題だ。」と、クリスが言う。 「全然ないんだよ。」

ツアーすることが、だんだん彼らがすることの一部になってきていることを感じているかどうか尋ねた。「うん、たぶんね。」と、ニールは言う。「僕は、それがどれくらい長くできるかはわからないけど、今はそう思う。」
それは良い事?

「僕は、ペット・ショップ・ボーイズが毎年進化しているのが好きだ。つまり、本当にこの10年間、僕たちはツアー・アクトになって来た。 僕たちが今、前よりよくツアーする理由は、僕たちがショーをするのが好きだからだと思う。まあ、ばく然とそれをやる方法をちょっと学んだんだと思う。」

「ツアーのために何かやっている?」とクリスに尋ねる。「ツアーに行くと、いつもおもしろいことがたくさんある。僕には、家にいる理由がないからね。」 彼はこの新しいショーについてこう言った。 「それには実際にパーティーの雰囲気があるというアイデアがある。ツアーの初期、ショーの最初の四分の三は、すごく難しかった。もし君が観客席にいたならね。」
「ステージの上にいても同じだよ。」ニールが言う。

「君はアンコールだけで本当に理解できた。」と、クリスは言う。 「その時の君がラッキーだったならね。このショーは、より熱狂的なパーティーの雰囲気だ。オール・ダンシング、オール・スタンディングだ。」

それらの初期のツアーの美学の理由は何だった?

「後悔。」と、クリスは言う。

「それはちょっと違うな!」 ニールは反対する。「Derek Jarmanのツアーはそうじゃなかった。」

Performanceツアーはそうだった。」とクリスは主張する。

「「Its a sin」 が3番目のナンバーだった!」 ニールはさらに反対する。

なぜ現在、後悔よりもあふれんばかりの興味を持っている?

「新しいアルバムがかなり熱狂的なポップ・ミュージックのレコードだからね。」と、クリスは言う。「'中年の危機ツアー'さ。」

どんな方法で?

「僕たちは青春を再び過ごしている。再びね。」

ニールは、「ポップ・スターみんなが思うことなのかな?」と尋ねる。

ポップ・ミュージックの世界の中に、他のわずかなツアー・プロダクションが存在することが出来る。
リハーサルは、シンガーの衣装に2個のリンゴを隠し、そのシルエットが保つ効果について議論されるためにストップしている。Pandemoniumツアーは、運のいいその一例だ。



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