1. More than a dream/Heart
N:ニール・テナントです。
C:僕はクリス・ロウ。
N:ペット・ショップ・ボーイズです。それに、セットデザイン担当のエス・デヴリン。
E:ハロー。
N:今のがエスの声だよ。映像を見ながら感じたことを話していこうと思う。(…やや沈黙)
C:ほら、話せよ(笑)。
N:ここはO2アリーナ。ライヴの最初では、僕らは箱の後ろに立っている。箱をかぶってね。前がよく見えないから少し怖かった。マイクの場所も分かりにくいし。
E:ここは私のお気に入りよ。箱をかぶったまま、最初の曲を歌ってくれるなんて。
C:君が懇願するからだ(笑)。ずっとかぶっていたかったね。
E:技術的に難しかったのが、壁を倒さずにドアを開ける点よ。
C:どうやったの?
E:ボール紙で補強したの。
C:真ん中から出た時もあったね。
E:ボール紙が濡れちゃったのよね。
N:このビデオ好きだな。
C:このDVDで初めて後ろの映像をじっくり見たよ。
E:観客は、後ろにあるのがただの50個の段ボール箱とは気が付いていないわ。
N:ただの段ボール箱じゃない。きちんと格子状に積み重ねられていて、映像を映し出している。
E:そうよ。段ボール箱からイメージが発せられている感じにしたの。LEDスクリーンみたいにね。
C:風船は観客が?
E:ええ、編集でカットすべきよ。
N:EP「クリスマス」にちなんでいるのさ。
C:あ〜。
N:ジャケットが風船だろ。ライヴの間中、浮かんでいるよ。(双子ダンサー)ガールズだ。彼女たちはライヴの間中、箱をかぶったままでかわいそうだ。その状態であれだけ踊ったんだからすごい。
C:透けて見えるね。
E:光が後ろから当たるとね。最初のビデオで描かれているのは、箱に閉じ込められた心臓の鼓動。テーマは個人対カテゴリー。
N:二人のダンサーが舞台裏で歌っているんだ。
C:本当?
N:うん。
C:休んでいるのかと思った。
N:ちゃんと立って、マイクに向かっている。
(N:ロンドン!)
C:毎晩、街の名前を言うの?
N:後半だけさ。
C:はーん。場所の確認?
N:歓声が欲しいから。
C:歓声?ゴマスリって訳か(笑)。
N:DVDになるから、ここで歓声が欲しかった(笑)。この神経質な感じのダンスが面白い
E:肘の使い方がいいわ。
N:そうだね。ここで箱を壊すんじゃないかと心配した。狭かったんだ。
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2. Did you see me coming?
N:後ろで素早く箱を脱ぎ、サングラスと帽子をつけて戻る。
E:スクリーンの中の2人のダンサーが裏で歌っている。
N:そう。
E:ショーンとシャーロットよ。
(N:”Every night is Friday night…”)
C:金曜の夜だっけ?
E:月曜だよ(笑)。
E:最初のアイデアでは、クレイジーな金曜の夜、トイレで泣いて…”祝福”で終わる。
N:見てのお楽しみにしよう。
C:君の手の動きは振り付けかい?自分で?
N:そうだ。
C:かなり動かしているね。
N:ファンサービスだよ。(76年のゲイ?)
E:衣装の話を。テーマは“エリザベス朝時代のスパイ”。担当はジェフリー・ブライアント。
N:最初はコートだったよね。
E:あの恐ろしい紫の衣装、覚えている?
N:うん。
E:それが結局こうなったのよ、よかったわ。
N:ルーファス・ウエインライトがベルリンのシェイクスピアのソネットのライヴで、エリザベス朝時代っぽい衣装を着ていたんだ。肩の部分が気に入った。古風だけど未来的でね。
E:エリザベス朝はスパイの時代だったのよ。
N:その通り。
E:クリスの衣装は黒のキューブでできている。プラスチックのはやめたのよね。
C:いや、何度か着たよ。でもラフカットを見たら、プレーンな方が見栄えがしたからね。着ててラクだし。
E:演奏むきね。
C:ジェフリーは最後まで衣装を作り続けていたね。
E:ビデオの中で、ショーンとシャルロットが出会う。箱をかぶった人たちに、箱の中にいる人たち。彼らの物語を追っていくのよ。最後までね。
C:ピクセル化したダンスがいい。
E:ここで恋が芽生えるの。これが、後の大ゲンカにつながるのよ。
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3. Pandemonium/Can you forgive her?
N:ハーモニカはジョニー・マー。音楽はスチュワート・プライスがプロデュース。ブリット・アワードの時もプロデュースしてくれた。あれをヒントに歌をメドレーにしたんだ。「パンデモニウム」と「キャン・ユー・フォーギヴ・ハー?」を合わせた。曲の感じが似ているからね。ガールズも歌っているね。
E:このビデオのコンセプトは、パーティ最中のニールとクリス。周りでなにが起きているか、まるでわかっていないの。あなたたちのビデオに、そういうのが1本あった。数本かしら?
C:全部そうかも。
E:アハハハハ!なるほどね!
C:ワンパターンなんだ。
E:大勢が小さな箱の中にいる。振り付けはリン・ペイジ。
N:素晴らしい仕事をしてくれた。このライヴの出発点は、ブリット・アワードだよね。
E:そうよ。
N:あれもリンが振付をした。
E:セット・リストは、スチュワートやあなたたちが決めたのよね。あなたたちの曲全部を候補にして。
N:そうだった。
E:過去にリリースした曲すべての中から、物語に合うよう新旧取り混ぜて行ったの。すごく珍しいことだと思うわ。どういう音楽にしたいか、はっきりしているなんて。そういうバンドって、あんまりいないのよ。
N:君抜きで曲を決めるんだろう。
E:ライヴのたびに曲が変わったりするの。こんな風にじっくり案を練るのは珍しいのよ。
N:このライヴみたいに物語がある場合は、曲を変えることはできないんだ。あまり理解されていないけど、シンガーは、ランナーと同じで途中でやめられない。イントロをミスっても演奏は続く。
E:そうね。走り続けるのね。
N:そうするしかない。クリス、下には何が?
E:台の下?
N:そう。
C:飲みのもが入った冷蔵庫に、ヒーターに、扇風機。それにノートパソコン。
N:冷蔵庫なんてあった?
C:いや。でも欲しかったな。ライヴの合間にウオッカ・トニックでも飲もうと思ってさ。
E:ダンスもしたわよね。
C:この時だけは、僕だけが出ずっぱり。
N:そうだった。最後のライヴの時もね。
(ハロー、ロンドン!僕らはペット・ショップ・ボーイズ。パンデモニウムにようこそ。次の曲は「Love
etc.」。)
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4. Love etc.
N:僕の言ったことが一部カットされているな。これは2009年12月21日に撮影された。4時頃、会場に着いた時は雨が降っていたんだ。それが2時間後には大雪に。後で聞いたんだけど、チケットを買ってくれたお客さんのうち2000人が会場に来られなかったんだ。残念な話だよ。だから来てくれた人たちにお礼を言ったんだ。”大雪の中、来てくれてありがとう”って。
E:このビデオは、ハン・フーガーブルーガが編集しなおしたの。格子にフィットするようにね。
N:ブリット・アワードのために作った。このビデオの撮影は、史上最短で終了。
E:2時間?
N:いや、10分だよ(笑)。僕が口パクしている顔を、普通のカメラで撮っただけだ。それに、曲に反応しているクリスを撮影。そして僕らの顔を、跳ねるボールの上に載せた。グラフィックだからね。
E:ハンは、格子に合わせるのをひどく不安がっていたわ。元のままがいいって、変えたがらなかったの。結果的には、彼はよくやったわ。複雑な構造ね。ニールは所定の位置に立たなくちゃダメ。でないと後ろに影ができる。
N:みんなノってるね。
E:サングラスをかけていて、見える?
N:はっきり見えるよ。
E:パックマンね。最初はパックマンを大々的に使うはずだった。迷宮の中の電気回路みたいな感じで。
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5. Building a wall
(ガラガラ・・・)
N:今のは、僕のグラスの音だ。ここのドラムがいい。子供のころは楽団にいた?
C:ああ、スネアドラムを叩いていた。ドラムは気分転換になるよ。
E:「インテグラル」から「ビルディング・ア・ウォール」。この移行は上手くいかなかった。ファンダメンタル風になっちゃうの。2つのスクリーンの大きさは、ファンダメンタル・ツアーのキューブと同じ大きさなの。”原子分裂”よ。
N:そうだった。
E:つながっているの。
N:崩れた。
E:ツアーでの反省点は?
C:ないよ。
E:一度も?
N:失敗したことはない。
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6. Go west
N:ショーンとシャーロットだ。それに風船。
E:2人はクラブで出会って、体操のレッスンを受けるの。
C:中国でね。
N:中国で。
E:そうなの。大まかなストーリーはこんな感じ。
N:このビデオを撮った後に、ショーンが髪を切ったんだ。
E:そうよね。
C:この時はかつらだ。
E:まさか。
N:本当だよ。”まさか”だって?カツラなんだ。
E:似合っているわ。
N:まるで往年のシンガー、リック・ジェームスみたいだ。80年代初めのね。
E:思い出した。カツラよね。
N:大騒ぎだったんだよ。
E:髪が長くなきゃ、シャーロットと合わないわ。
N:ジェフリーがカツラを調達したんだ。これは「パニナロ」のリズムトラックだ。彼らが乗っている箱は、段ボールじゃないよね。
E:段ボール箱よ。補強はしているけど、見かけは同じ。段ボールなら安上がりだと思ったら大間違いよ。実際は、ものすごく高くついたの。耐燃性にしなきゃならなかったのよ。
N:舞台裏で、ポリーとソフィーが歌っている。
E:ライヴの出だしの10分間は、抑えた感じで、それから開放的になる。面白いわ。
C:それなら”ゴー・イースト”する。
E:そうね。
N:第1部の終わりだ。
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7. Two divided by zero
C:これは何?
E:”ヴァーサタイル”よ。90年代初めに流行したけど、最近はあまり使われていない。それぞれの四角がピクセルなの。
N:これは80年代初めのニューヨークを表現している。最初にレコーディングした街だ。クリスがミラー・ジャケットに着替えた。
E:このジャケットのせいで首の回りが傷ついた?
C:いや。でも、ニールの目をえぐりそうになったよ。
N:着替えるためにクリスと舞台裏へ行ったら、彼のジャケットが僕の目に当たりそうになった。それから、離れて着替えることにした。
C:最初は首に食い込んで痛かったけど、ジェフリーが直してくれた。
E:彼はジャケットを作るのに6週間かけてたわ。
C:マジ?
N:2着作ったんだよ。
E:ファッションショーよ。シャーロットとショーンがニューヨークへ。西部から中国、そしてニューヨークへ。そこでいろんなファッション界の人たちに会う。
N:これは?
C:物のイメージを変える特殊効果だよ。
E:ジェフリーの衣装が大活躍ね。
N:確かに。
E:毎日毎日、衣装を作り続けていたもの。
N:箱の後ろは衣装が山積みだ。早変りのために。
E:(ショーンの)本物の髪ね。
N:これが本物だ。彼はマイケル・ジャクソンの公演にも出演している。引っ張りだこさ。
E:1人2役って訳ね。ピクセルや箱を使って構成すれば、何でも表現できる。窓や照明、それに人々も。この2人、怖いわね。
N:彼女たちに会ったことある?(笑)
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8. Why don't we live together?
N:この2つは、ファースト・アルバムの曲だ。今回のツアーで初めて歌った。気にいったよ。
E:このジャケットは?
N:出だしで着ていたジャケットは嫌いだった。3部と4部のも嫌い。僕らがヨーロッパで…。
E:ルクセンブルグね。
N:思い出した。買い物に行ったら、このジャケットがセール中だったから買った(笑)。
E:この建物は…。
N:このジャケットと帽子とサングラスだと、Run D.M.Cっぽくなる。
E:これはバウハウスのバレエがヒントになっているの。ダンサーたちがニューヨークの建物の格好で登場するのよ。この建物はボール紙でできているの。早変わりにぴったり。
N:(クリスのアップ)いいショットだ。
E:この建物、笑っちゃうわ。
N:だって、コミカルな感じにしたから(笑)。
E:テーマはシリアスよ。人と建物の共生を描いているの。ダンサーは笑ってないわ。
C:いや、笑っているよ。
E:見るたびに笑っちゃう。次のダンスのヒントは…。ビデオを見てヒントを得たの。
N:マドンナ?
E:そう。
C:なんて曲だっけ?
N:「ドレス・ユーアップ」
C:僕が踊ると違って見えるね。
E:マドンナがこのダンスを踊っていた。
N:クリスのお気に入りだ。始まった。
C:おお〜。
E:クリスがマドンナに。
C:僕は見ないよ。
E:見せ場なのに。
N:最高だ。
C:やめてくれよ。
E:クリスは目を閉じているはずよ。
N:スキップもする。戻って来た。
C:自分の居場所に。
E:このジャケットに関する問い合わせが来たわ。欲しいって。モスクワからはるばる運んできた箱よ。
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9. New York City boy
N:このビデオは、「ワズ・イット・ワース・イット?」と、「ニューヨーク・シティ・ボーイ」のミックスだ。
E:この曲を加えたのは…?
N:アメリカからだ。ツアーの後半さ。スチュアート・プライスが、このリズムトラックをアレンジした。
C:(歌詞の)”フーチーズ(hoochies)”って?
N:女性の事さ。デヴィッド・モラレスと曲を書いている時、スタジオで教えてもらった、ニューヨークのスラングだ。他にも教えてもらったよ。
E:「サタデー・ナイト・フィーヴァー」みたい。ビデオにジェフリーが映っているの?
N:デントンが映っているのは知っているけど。
E:ビデオを取りまとめたのはワンドットゼロよ。これは…。
N:僕は後ろからこの“お尻振り振り”を見ていた(笑)。デントンだ。
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10. Always on my mind
N:クリスはスクリーン上の楽譜を見ている。前のツアーの時もそうだったよね?
C:うん。
N:画面上を楽譜が流れて行くんだ。
C:この曲は暗譜している(笑)。他の曲は楽譜が必要だけど。
N:ランニング・マシンみたい?
E:クリス、ランニング・マシンに乗っているみたい?
C:マシン?
E:マシンの上を走っている気分?
C:う〜ん、そうは思わないな。
E:ブラックプールとニューカッスルがビデオに映っている。
N:僕らの出身地だ。
E:そうね。
C:走っている気分かも。
E:でしょ?
N:ブリット・アワードで使ったビデオだよね?
E:ツアーの最初のころは違うビデオを使っていた。キューブが動く部分にね。でも、もっと効果的な映像にしたかったの。だから、あなたたちの出身地の白黒映像を使うことにした。
(ロンド〜ン!)
N:ライヴをやっている街の名前を毎晩叫んだな。
C:間違えたことは?
N:ない。
C:誰に手を振ったの?
N:誰でもない。
E:トランポリンね。
C:これが商売のコツさ。だから今まで続いている(笑)。
N:見ろよ。彼らは3分くらい跳んでいるよね。
E:全員一緒に跳ぶのは難しいのよ。
C:無理だよ。
E:そうね(笑)。跳びながら歌っているの。
N:このジェット・コースターは(ブラックプールの遊園地Pleasure Beachの)ビッグ・ワンか?
C:そう。
E:最後に乗ったのは?
C:数年前さ。怖かったな。
N:残念なことに、歌がうまかったのは、コペンハーゲンとグラスゴーの観客だ。
E:マンチェスターも。
N:そうだね。南米もよかった。
E:冷淡な歌詞ね。レコーディングの時は気がつかなかったけど。
N:自分勝手な男の歌だよ。
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11. Closer to heaven/Left to my own devices
N:今度は箱の上に乗らなきゃならない。パンツがきつくて上がりにくいんだよ。
E:この曲は胸が詰まるわ。あなたたちとの初仕事だもの。
N:10年前の「クローサー・トゥ・ヘヴン」だね。
E:夫と出会った。
N:へえ、旦那さんと?ワークショップでか。舞台裏でも歌っている。
E:いい感じ。ルービック・キューブになる。
N:きれいだね。これを見るまで知らなかったよ。
E:あなたたちの顔が、キューブの中に見えるの。ニールとクリスを合わせたような顔よ。このキューブのアニメーションの中に歌詞にまつわるアイコンが全部出てくるの。
N:そうだった。Lの字が見える。新しいベースライン?
C:スチュアートが、セローン(?) っぽくするためにコードを変えた。
N:そうだった。このダンスも好き。
E:ええ。
N:”ホットな休日”。
C:いいダンサーだな。
N:うん。このライヴをやるに当たって、歌えるダンサーを探したんだ。ミュージカルみたいにね。踊れるシンガーじゃなくて。
E:いろいろ要求したわ。
N:そう。大変だったと思う。ピート・グレダルのもとで、毎日リハーサルした。
E:このビデオと「ハート」のビデオは同じ人が作ったの。共通した要素があるわね。照明は、ロブ・シンクレア。世界中の会場の照明を手掛けてくれた。
N:彼の参加は初めてだ。
E:衣装のシワにまで気を配ってくれたわ。
C:顔のシワまでね(笑)。
N:このライヴのスタッフは、みんな白い上着を着ている。箱を動かさなきゃならないからね。ステージの組み立ても解体も誇りを持ってやってくれた。
E:リンの振り付けよ。
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