BEHAVIOUR1-6
「My October symphony」
ニール:ロシア革命についての歌
(一言コメント:1999年)
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原文歌詞はこちらでご確認ください
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これほど多くの混乱
秋がやって来ると
10月をどうしようか?
しかめ面のウラでどうやって微笑む?
落ち着くのは難しい
とても困難だ
パレードは取り消されるのか?
10月にはいつも行進をする
僕らは救われなかったと言われている
僕らは勇敢にならなくてはならない
僕の10月の交響曲を書き直すか
改訂すべきだろうか
あるいはしるしとして
献呈の辞を変更する
革命から暴露に
僕たちはみんな飲んでいる
葉が地面へ落ちるとともに
僕たちは考えている
10月は僕らを失望させる
それからも今も
12月を代わりに
思い出そうか
あるいは、2月を心配する?
戦争で混乱した死者を哀悼してくれ
激怒することなく
僕の10月の交響曲を書き直すか
改訂すべきだろうか
あるいはしるしとして
献呈の辞を変更する
革命から暴露に
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Written by Neil Tennant/Chris Lowe
Produced by Pet Shop Boys and Harold
Faltermeyer
ニール:アルバムの中で好きな曲。ロシア語で”10月”と叫ぶ声で始まる・・・ショスタコーヴィチの第2交響曲から取った。
クリス:すごくレイヴだ。ハウス・ピアノだ。
ニール:僕たちはこれをグラスゴーで、ギターで書いた。僕はワウペダルを買ったんだ。最終的な記録では、ギター弾いたのはジョニー・マー。どのくらい長く仕事が長引くかわからなかったから、この歌には何年もかかったな。もともと、もっと言葉はあったんだ・・・歌詞は長かった・・・。僕は貧相に聞こえると思った。ラップをやろうかともした。それから、これはもっと短くできると思った。“ooo”ソフトも使えるな。僕らはマーヴィン・ゲイの「What’s going on」をスタジオでコピーした。僕らはいつもアルバムでは「マーヴィン・ゲイみたいに作ろう」と言っていた。違うものを同時に出来る2つの音があることがいいのはわかった。でも、僕は別のことをするといつも上手くいかないんだ。それで、前のツアーで前座で歌ったジェイ・ヘンリーを持ってきた。僕は同時に低音・高音のオクターブを一緒に歌っている。僕らはBanalescu
Quartetにそれで演奏してもらった。彼らはデレク・ジャーマンのツアーのサポートだったんだ。最初のコンサートで、彼らは困惑する観客の前でショスタコヴィッチの「弦楽四重奏曲8番」を演奏したんだ。
クリス:僕のアイデアじゃないよ。
ニール:これはロシアに関する僕の歌のうちの1つだ。僕はショスタコヴィッチに関するイアン・マクドナルドの著書を読んでいた。かつて、ソ連の芸術家がみんな10月革命を記念する公式芸術品を製作したという考えに僕は魅かれたんだ。作曲家たちはみんな、10月革命の大きな業績を祝って、10月の交響曲を書いた。その後、全てのものが崩壊し、それらの値が無益に見なされた時、人々には無価値だった芸術品が残された。ショスタコヴィッチは実際に、共産主義への反対のサブテキストを持ちながら政権に反対であるとみなされた。彼らの10月交響曲を見て、彼らがどのように救い出すことができるかと考えた。詩は、何がロシアで起こっていたか説明している。彼らは、以前は10月に行進をしたから、とても混乱した。“僕の10月の交響曲を書き直すか/改訂すべきだろうか/あるいはしるしとして/献呈の辞を変更する/革命から暴露に”。作曲家は、2文字を変えることによって、君は革命を一度も信じたことがないと主張できるだろうか、と思っている。彼は生き残るために妥協した人だ。歌はロシアの歴史の異なった革命の期間について言及する。2月革命が1917年の最初の革命だったから、”2月を心配するべきだろうか?”と尋ねる。ボルシェビキに転覆させられた中産階級の議会制民主主義革命だ。11月に第一次世界大戦は終結した。12月は、有名なデカブリスト党員の陰謀があった。10月革命は・・・ロシアのカレンダーは違うから、11月に起こったことだけど・・・1917年のボルシェビキ革命だ。それか、今はボルシェビキ・クーデターとも言える。ある意味、歌は本当の混乱に関する。三世代に渡って厳密なイデオロギーを信じるようにしつけられていて、急にイデオロギーが廃止される時、さらに多くの物をどう考えるべきかよくわからない。僕は、いつも現代の生活にポップスが存在すべきであるといつも感じていた。当時、ロシアではこういう変化は起こっていて、言葉を変えた非常に強力なものだった。でも、音楽に関する歌だった。その結果、僕らには音楽のスタイルのかなりおもしろいミックスがあった・・・レイヴであり、このマーヴィン・ゲイ的なものを続けている。同じ頃、とてもクラシックなアレンジの弦楽四重奏曲もあった。最後は、いつもイエロー・サブマリンを思い出させる。彼らが行った「ペパーランド」だ。
(以上、2001年ブックレットより)
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イメージビデオ(アンオフィシャル)(You
Tube)
★用語・人物メモ★
ロシア語で”10月”・・・・Октябрьская
ワウペダル(wah-wah pedal)・・・筐体につけられたペダルを足で操作する事により、聴感上強調される周波数帯を変えるエフェクター。
ジョニー・マー(1963-)・・・元スミスのギタリスト、作曲担当。鬱屈ゲイことモリッシーから開放されたはずだけど、PSBとは仲良し。現在はモデスト・マウスに加入、2007年サマソニで来日。
ooo・・・Open Office org (オープン・オフィス・オルグ)の略。パソコンのソフトウェア。
マーヴィン・ゲイ(1939-1984)・・・アメリカのソウル、R&B歌手。「What’s going on」は代表曲。特にブラック・ミュージックに大きな影響を与えた。実の父親に射殺された。
デレク・ジャーマン(1942-1994)・・・イギリスの映画監督。PSBのPVをてがけた縁で、1989年のファーストツアーの舞台監督をした。そのとき舞台で使用した新たに撮り起こした映像集は「Projection」としてまとめられている。AIDSにより亡くなった。甘党。
ショスタコーヴィチ(1906-1975)・・・ソ連を代表する音楽家の一人。政府が自国の音楽に求めた「社会主義リアリズム」「形式において民族的、内容において社会主義的」の路線に沿う作風の作品を発表し続けることとなる。
イアン・マクドナルド(1948-2003)・・・音楽ライター。ショスタコーヴィチとビートルズ研究で有名。
10月革命(11月革命)・・・1917年、ロシアで起きた革命。レーニンを議長とした「人民委員議会」が発足、新政府が樹立。
2月革命(3月革命)・・・市民の抗議デモに始まり、ニコライ2世が退位し、ロマノフ朝が終わりを告げた。一般的に10月革命と合わせてロシア革命という。
ボリシェヴィキ・・・「多数派」を意味する。レーニンが率いる左派一派。ソビエト連邦の前身となった。
デカブリスト・・・1825年、デカブリスト(12月党員)の乱を起こした、貴族将校たち。サンクト・ペテルブルグで結成された秘密結社が母体。
ロシアのカレンダー・・・当時ロシアではユリウス暦を採用していたので、現在一般的なグレゴリウス暦とは、日時にズレがある。
イエロー・サブマリン・・・ビートルズのアルバム、曲およびアニメ映画(1968年公開)。「ペパーランド」はアルバム「イエロー・サブマリン」中の1曲。「イエロー・サブマリン・イン・ペパーランド」という曲も収録されている。
ひ〜。世界史をとっていなかったわたしには難しすぎる、ロシア革命。結局全然わかっていないような気がします・・・ゴメンナサイ。ニールは革命にアートを感じる人。政治や社会は、ベタベタのラブストーリーとは対極にある、PSBの要素のひとつだけど、堅くて難しいことをアートに昇華するのが彼らのワザ。91年のツアー「Performance」でもこの曲はシアトリカルに披露されたが、2人は全くパフォーマンスせず、バックシンガーが歌った。こういうのをやりたかったらしい。
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