BILINGUAL*1-8


Up against it
(邦題:「立ちふさがる壁」)


クリス:壁に背を押し付けて
 (一言コメント:1999)

 

 


原文歌詞はこちらでご確認ください



この街にニュースが
哀れみもなく割って入る
戦争はずっと前に終わった
僕たちはまだくたくただ

壁に向かい
君はより高く飛ぶ
さらに高みから落下する
壁に向かい
なぜ、と疑問に思う
結局、戦ってしまったことを

なんて寒い冬
ピンターのように遅いシーン
君の時計をぴったり合わせて
時間をつぶす余はある

壁に向かい
この残りを飲む
錠剤を甘くするために
壁に向かい
さらに痛みが増すと
さらに結果が減る

ノスタルジーで包まれた
ショーを並んで待つ
トラファルガーへ戻ろう
キスをしておくれ、そしたら僕は行く

生石灰の中のとても深くに
古い犯罪の骨
僕は、掘り返した人を知っている
彼はまだ苦しんでいる

それに対して
深く埋葬された
僕はぞっとさせられる

それに対して
君の憎しみは続くと
ゆがみは大きくなる
それに対して
周りをよく見ろ
自分の人生のために走れ

痛みが増せば
結果が減る


Written by Neil Tennant/Chris Lowe


Produced by Pet Shop Boys and Chris Porter


ニール:クリスが音楽を書いた。彼のこの曲のデモは「Indie」って言うんだ。

クリス:タイトルはこの曲には関係はないよ。

ニール:そう、で、ジョニー・マーにギターを弾いてくれないかと頼んだ。クリスがうるさいギターみたいなものを描いたから、ギターを入れるべきだと思った。デモでは、彼はギターサンプルでメロディを弾いた。クリスはキーボードでギターソロをプレイした。これはすごく簡単なトラックだ。僕はデモのときに詞を書いた。タイトルはジョー・オートンがビートルズのために書いて使われなかった映画の台本のタイトルからつけた。このメロディに4節のフレーズを合わせる必要があって、僕の休憩室にあった本棚を見たら「Up against it」があった。このタイトルに決定したのは、さらに僕は第二次世界大戦の後にロンドンに関する本を読み続けていた。そして、歌詞はある種、戦後のイギリスに関するものだ。 彼らは新しいエルサレムを造るつもりだと、人々がいかに考えたか、そしていつの時代でも、皆が彼らのベルトを締めるようにどのように言われたかということだ。40年代、60年代、70年代、80年代、彼らはそれをやっていて、僕がこれを書いたとき、彼らはまだそれをやっていた。いつも前進しているけど、本当はどこにもたどりついていない。常に経済危機があるように思われ、その楽観論は消える。この歌は「なんてペテンなんだ」と言う。最初の1節、「なんて寒い冬」は、1947年と48年の伝説的に寒い冬を想定した。“Pinter”と“Winter”で韻を踏むなんてスティングっぽくない?「生石灰の奥深く」は、僕が歌を書いていたように、事実になった。彼らは、ロシア皇帝と彼の家族の骨をロシアで掘り出した。共産主義は馬鹿げていると言いたい。歌全体で、政治が馬鹿げているってことを言っている。

クリス:バスラインはちょっとラテンのリズムだ。

ニール:ジョニー・マーが来て、「今それに出くわした、本当に対峙している、ooohwhooo, whooo」という最後のバッキング・ボーカルのアイデアを出した。彼は「もし君がクインシー・ジョーンズになれたら、こういう風にやっただろう」と言ったので、僕は「じゃあ、やろう」と答えて、一緒に歌ったんだ。

クリス:僕らはシャロン・レッドの失敗をやり続けていた。拍手喝采もなく。

ニール:とても良いエンディングだと思う。

クリス:クリス・ポーターはよくやった。まさに役に立つ適役のプロデューサーだ。

 (
以上、2001年ブックレットより)


★用語・人物メモ★

ハロルド・ピンター(1930-)・・・イギリスの劇作家、詩人。ポルトガル系ユダヤ人。不条理演劇の大家といわれる。2005年ノーベル賞受賞。映画の脚本も手がけ、最近ではマイケル・ケイン、ジュード・ロウ主演の「スルース」(07)の脚本を書いている。

ジョニー・マー (1963-)・・・マンチェスター生まれ。ザ・スミスの作曲&ギタリスト。ザ・スミス解散後、ニュー・オーダーのバーナード・サムナーとElectronicを結成。PSBも参加した。ちょくちょくPSB作品には参加している。現在はモデスト・マウスに加入、2007年サマーソニックで来日。

ジョー・オートン
Joe Orton(1933-1967)・・・イギリスの作家・脚本家。彼と、ジョーの恋人で彼を殺害したケネス・ハリウェルを描いた映画が「プリック・アップ」(1987年)で、ゲーリー・オールドマンがオートンを、アルフレッド・モリーナがケネスを演じた。ケネスはジョーを殺した後に服毒自殺した。「Up against it」は絶筆。映画によれば、ビートルズの映画(Up against it)の依頼が来てすぐにジョーは殺されている。

スティング (1951-)・・・ニューカッスル出身。ニールの高校(セント・カスバート・グラマー・スクール)4歳先輩。元小学校教師。ザ・ポリスのベース&ヴォーカル。現在はソロだが、2007年に再結成して来日公演もした。

クインシー・ジョーンズ(1933-)・・・アメリカのジャズ、ソウル、R&Bシンガー。

シャロン・レッド(1945-1992)・・・アメリカのハウス・シンガー。



 
メロディアス、かつニールの力を抜いたヴォーカルはPSBの“十八番。メロディもどこか哀しい。名曲「Rent」にも通じるものがある。ギターはジョニー・マー(実はなんとバッキング・ボーカルもマー兄貴が入れているらしい)。「Fundamental」でいえば「20Th century」の立ち位置。メロディアスでいい曲なのにちょっと地味ゆえ、アルバムの収録場所によっては忘れられがちで残念。



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