BILINGUAL*1-9


The Survivors


クリス:気分を高揚させると同時に、憂鬱にもさせるような曲のひとつ
 (一言コメント:1999)

 

 


原文歌詞はこちらでご確認ください



風の強い橋を超え
ある寒い冬
エンバンクメント・ガーデンズを抜けて
光とぬくもりの元へ行く
音楽と向き合って 
(
簡単じゃないけど)
寒さを忘れ
未来と向き合って 
(
簡単じゃないけど)
意思を見つける・・・

人生が生きるに足るなら
それはやり遂げるに値する
人は許されてもいい
人生は逃避だと思っていても
多くの人生に、多くの道が交差するけど
とにかくみんな生きていく

あたりを見回し
未来を心に描いてみよう
それは最終版かい?
それともこのテーマが退屈なのかい?
肩をすくめて見せるのはやめようよ
 (
そんなこといつでもできる)
無視することはできないよ

人生は生きるに足るもの
まだ少しは意味がある
人は許されてもいい
人生はごまかしさ、なんて
思っていても
言葉を並べると、わざとらしいけど・・・
とにかくみんな生きている

(
生存者たち)
我らはこうべをたれる
(
生存者たち)
人ごみの中の
見知らぬ顔たちの形見の品に・・・

教師でも芸術家でも
(楽じゃない)
サタデー・ガールズでも
(楽じゃない)
着ているのがスーツでもスパンコールでも
(楽じゃない)
ツインセット&パールでも

人生が生きるに足るなら
走りぬかなければならない
与えるための手段として
決して勝つための競争ではなく・・・
多くの人生に多くの道があるけど
とにかくみんながたどりつく
多くの人生に多くの道があるけど
とにかくみんな生きていく


Written by Neil Tennant/Chris Lowe


Produced by Pet Shop Boys and Chris Porter


ニール:これはとても悲しい歌だ。「急いだ人生であると思うことを許されるかもしれない」。このアルバムのQ誌のレビューでは、この歌はトム・ハンクスの受賞のスピーチくらい吐き気を催すって。僕はそうは思わないけどな。その実はペット・ショップ・ボーイズを落としめるのが難しいと分かる誰かだと思う。このための音楽は、クリスのイアン・ライトのデモのひとつだ。

クリス:イアン・ライトと一緒に仕事をしたときいくつかのトラックを手がけた。彼と僕は彼のために明らかにいい曲を選んで、それが「Do the Wright Thing」になった。

ニール:クリスは、使われなかった中で一番いいと思う曲のカセットを僕にくれた。1995年までに歌詞を書くには時間がかかった。僕がそれを書き出したのは電車の中だったと思う。いわゆる良いような/悪いような気分の歌だ。これは確実に年を重ね、年老いていくことについての歌だ。ここまで生きてきた。まだ生きている。僕の友人がこの年のはじめ自殺をして、僕はがっかりした。彼女のことは、「教師、アーチスト、サタデー・ガールズ」と、この歌の中にこめられている。僕は彼女と仕事をして、サタデー・ガールは彼女がいたというグループだ。「Result」でライザ・ミネリとレコーディングした「Don
t drop bombs」は、もともとサタデー・ガールへの歌がアイデアだ。

クリス:「The survivors」は賛歌的サウンドだ。

ニール:クリス・ポーターと最初にレコーディングした曲だ。僕たち両方とも、デモをやってすぐにアルバムに入れようと思った。

クリス:特に僕たちがバッキング・ボーカルを加えた時ね。

ニール:1995年の終わりにリミックスをして、ドラム・トラックを変えた。でも、「BILINGUAL」はリリースされた後で、僕らがやった最初のミックスに戻った。クリスはいつも好きだったという。僕はリズム・トラックの音が完璧だと思わない。ちょっとあいまいだ。でもこの質問と答え、呼びかけと応答はいい。歌の中の「twinsets and pearl」という言葉は素晴らしいと思う。3分37秒の最後のコーラスで、僕が2回「race」と歌っているのが聞こえるけど、これはミスだ。でも、残した。

 (
以上、2001年ブックレットより)



デモ・プロモーションビデオ(YouTube)


★用語・人物メモ★

エンバンクメント・ガーデンズ・・・ロンドンの中心地、テムズ川に面した公園。チャリング・クロスの近く。

イアン・ライト(1963-)・・・イングランドのプレミアリーグで活躍していたサッカー選手。アーセナル時代、絶大な人気を誇った。彼が出したアルバム「Do the Wright thing」に、大のアーセナル・ファンのクリスが参加。ビデオはこちら。

トム・ハンクス(1956-)・・・ハリウッドのヒエラルキーではトップに位置する俳優。最近太った。ここでいうのは、多分アカデミー賞で主演男優賞(「フィラデルフィア」「フレスト・ガンプ」)をとったときのスピーチだろう。ちなみにエイズをテーマにした「フィラデルフィア」の、ニール・ヤングの歌った主題歌を、PSBはライブでカバーしている(CDにはなっていない)

ライザ・ミネリ(1946-)・・・女優、シンガー。最近太った。ゲイ・アイコンであるジュディ・ガーランドの娘、ゲイと結婚していた自身もゲイ・アイコン。代表作はゲイの金字塔「キャバレー」。PSBが彼女のアルバム「Result」をプロデュース。「Losing my mind」「Don
t drop bombs」がヒット。ビデオはこちら。

twinsets and pearls
・・・「twinsets」は、1940年代に流行った女性もののニットのカーディガンやジャンパー。グレース・ケリーやマリリン・モンローが来て“フェミニン”の代表のようなファッション。それにパール(真珠)をあわせるのが一般的。



90
年代前半を荒らしまくったエイズ危機を、辛くも生き残った人たち(ニール&クリス自身も合わせて)のことを指す。PSBにとって、愛と死は重要なテーマだ。その思いテーマを優しく包み込むような曲に昇華させている。
エルトン・ジョンはかつて一緒に遊びまわった友人や元恋人がエイズで次々と死ぬのを目の当たりにして、恐る恐るHIVの検査に行ったという。自分がHIV陰性だったと知ったとき、もう夜遊びはやめて、生きていることに感謝し、人のためになれるよう誓ったという。ニール&クリスにとってもこの曲はそんな、過去とこれからの未来への一種のけじめみたいな1曲なんじゃないか。
曲はとても優しくて宇宙的で、「Liberation」を思い出させる。シングルにはなっていないけど、デモPVが存在する。なんだか泣けちゃう歌である。



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