Produced by Pet Shop Boys Vocal by Sam Taylor-Wood
P.G Brunelli(インタビュアー):このアルバムからのファースト・シングル「I Don't Know What You Want But I Can't Give It Anymore」のB面に「Je t’aime…moi, non plus」(ジェーン・バーキンの60年代の曲で、歌詞はほとんどないが、セクシュアルな音がたくさん入っている)の君たちのバージョンが入っているよね。これもやっぱりジョークなの?
ニール:いや、アレはもともと「We love you」というアルバムに収録されていたんだ。アーティストやミュージシャンのコラボレーション・アルバムだよ。サム・テイラー・ウッドがジェーン・バーキンのカバーをやっていて、僕たちにも一緒にこの曲をやらないかって誘ってきたんだ。どうにも収拾のつかないアルバムで、行き場をなくしたような感があったから、結局途中で作るのを止めたんだけどね。
P.G:このバージョンは、オリジナルには似ているのかい?
ニール:近いね。オリジナルより8小節長いだけだよ。「We
love you」ではこのB面に入っているバージョンより少し短いけど、これは単にあのアルバムのほうでカットされた部分を僕たちが付け加えただけだからね。
クリス:僕らのバージョンでは、オリジナルとは違って彼女(ジェーン・バーキン)はオルガズムに達していないんだ。僕らの方は、全部英語に翻訳してあるんだけど、問題なのは「moi, non plus」ってところで、これはまったく何の意味もないから、どうにも上手く訳せなかったんだよ。
ニール:多分フランス語でも何の意味もない言葉だよ。サムは例の「イングリッシュ・ローズ」みたいな声を持っているから、「you are the sand and I’m the lapping wave」って言う部分を彼女が歌うと、実に妙な感じがするね。
(以上、1999年「In Rock」インタビューより:インタビュアー=P.G.Brunelli)
*以下はアメリカのファン・マスターWayneさんのサイトの曲説明を訳したものです。 http://www.geowayne.com/psbhtml.htm このトラックは1998年、最先端のヴィジュアルと音楽アーティストにより創られたレアなコンピレーション「We Love You」に登場した。そして後に「I Don't Know What
You Want But I Can't Give It Any More」CDシングルのボーナストラックとして入れられた。3つの点で際立っている。
フランスのシンガーソングライター、セルジュ・ゲーンズブールによって書かれ、オリジナルのレコーディングは1986年までリリースされないままだったゲーンズブールとブリジット・バルドーの1967年のデュエットだ。最初のリリースされたバージョンは1969年の女優のジェーン・バーキンとゲーンズブールのデュエットだった。
イギリスではナンバー1ヒットだったにもかかわらず(または、だからこそ)、明らかに性的な内容のための世界中の多くの国で広く発売禁止になった。以来それは多くのアーティストにカバーされているが、1978年の「Thank God It's Friday」のサウンドトラックのドナ・サマーとジョルジオ・モルダーによるものがもっとも有名だろう。
ボーイズがこの歌をやるずっと前から、タイトルの英語の意味に関しては思惑があった。 "Je t'aime"は明らかに「I love you」だ。そこは問題ない。
しかし、難題は「moi non plus」にある。文字通り翻訳すると、「me not more,(私はそれ以上でない) 」だが、熟語が確実にかかわっている。それはさまざまに訳される。文字通り、完全に満足できるように思える「me not more,"(私はそれ以上でない)」と同様に、「either me,(私は違う)」 「me neither,(私も違う)」「neither do I,(私はそうしない)」「nor do I(私もそうしない)」など。ゲーンズブールはフランス語のしゃれがナンセンスだと悪名高い。彼はかつて、歌のタイトルは、Salvador DaliがPablo Picassoと自分を比較する際に語ったものを真似たものであるとインタビュアーに言った。「ピカソは天才・・・私は、もっとそうだ。
ピカソはスペイン人・・・私はもっとそうだ。ピカソはコミュニスト・・・私も違う。」 したがって、「私はあなたを愛している・・・私も違う」は、 たぶん大部分はゲーンズブールの意図に正確な訳だろう。しかしながら、ペット・ショップ・ボーイズは、より賢明にそれを翻訳する。「I love you ・・・ but not more than me.(愛している・・・しかし私が愛するより愛していない)」。 もちろん、また、英語のその特定の意味も解釈は広く開かれている。いろいろに考えて欲しい。
「Je t'aime ... moi non plus」・・・フランスのセルジュ・ゲーンズブールの映画とその同名主題歌。当時恋人で主演女優のジェーン・バーキンが女性ボーカル(ブリジット・バルドーのために書かれた)、ゲーンズブールがバッキング・コーラス。 映画は、ジョー・ダレッサンドロ演じるトラック・ドライバーとそのゲイの恋人がたまたま寂れたドライブ・インに立ち寄る。そこのボーイッシュな娘(バーキン)は彼に惚れるが、ゲイだという事実を知る。しかし彼女は諦めず、彼に身を捧げる。これはハッピーな愛の物語ではなく、愛情などカケラも介さない男女の痛々しい不毛のセックスの物語。だから女が「Je t'aime(愛している)」と言っても、男は「moi non plus(俺も違う)」という掛け合いになる。 男性カップルはPSBの「Track
driver and his mate」の元ネタだと思われる。
Sam Taylor-Wood(1967-)・・・イギリスの女流写真家。PSBとはスタジオをシェアしていて、仲がいい。これまでに写真家としてPSBの「Somewhere」の舞台装置の映像作品、「Numb」のジャケットなどを手がけている。シンガーとしては“Kiki kokova”としてドナ・サマーの「Love
to love you baby」をカバー、2008年秋にザ・パッションのカバー「I'm in love
with a German film star」をリリース(いずれもPSBプロデュース)。アート・ディーラーの夫とは2008年9月に離婚。
「Thank God It's Friday」・・・1987年のアメリカの映画。日本未公開。挿入歌であるドナ・サマーの「Je t’aime」のビデオ(音源)はこちら。
サルバドール・ダリSalvador Domingo Felipe Jacinto DalíDomenech
(1904-1989)・・・スペイン・フィゲラス生まれの画家。天才で愛妻家で奇人のアーティスト。
パブロ・ピカソPablo Pablo,
Diego, José, Francisco de Paula, Juan Nepomuceno, María de los Remedios, Crispin, Cripriano, de la Santísima
TrinidadRuiz y Picasso(1881-1973)・・・スペイン・マラガ生まれの芸術家。20世紀最大のアーティストの一人。
ちなみにフランス語をかじった人間から言うと、肯定文の後の「moi, non plus」というのは文法的には間違っていて、肯定文に肯定の答えをするなら「moi, aussi」、肯定文の後に否定の答えをするなら「non plus」となるため、「moi, non plus」は肯定と否定の2つが混ざっているのです。あえて日本語訳するなら「僕も、そうじゃない」になります。