RELEASE1-1

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Home and dry

 


原文歌詞はこちらでご確認ください



そう、僕のベイビーは旅の途中
仕事をし、セールスをする
最高に甘い笑顔で
みんなを魅了している

ああ、今夜
君がいなくて寂しい
ああ、今夜
僕と一緒に
ここにいて欲しかった
でも、君が戻ってくるまで
会えない

ホーム・アンド・ドライ
ホーム・アンド・ドライ

JFK空港からの飛行機が
君をはるか彼方から連れ戻してくれる
暗くて荒れた
海を越えて

ああ、今夜
君がいなくて寂しい
ああ、今夜
僕と一緒に
ここにいて欲しかった
でも、君が戻ってくるまで
会えない

ホーム・アンド・ドライ
ホーム・アンド・ドライ

はるか彼方
昼と夜を越えて
君は今夜、僕の元に
戻ってきてくれる
僕はずっとここにいるよ
今夜、君から電話が来るまで
 
ああ、今夜
君がいなくて寂しい
ああ、今夜
僕と一緒に
ここにいて欲しかった
でも、君が戻ってくるまで
会えない

ホーム・アンド・ドライ
ホーム・アンド・ドライ


Written by Neil Tennant/Chris Lowe

Produced by Pet Shop Boys


Q.楽曲主導のアルバム?

クリス:今回のアルバムは実際には、機械主導なんだよね、でも、僕らが用いたサウンドは、ダンス・サウンドじゃないんだ。僕らは本物のロック・サウンドを搭載したんだよ。何本かギターを買って、それを実際に曲に合わせて弾いたんだ。そして、えーと、自分たちの一番気に入っている曲群が、それほどダンスっぽくないことに気づいたんだよね。それにまた今のダンスシーンはさ、今はダンス・ミュージックのほとんどが今はすごく限定的なものになっていて、実に狭いカテゴリーを限定的にターゲットにしているから、僕らとしてはそっちの方向に向かう必要性をあまり感じなかったんだ。で、ひとたびダンス音楽の要素は取り入れないようにしようと決めたら、すごく解放された。ソングライティングの可能性という意味で言うと、もっとバラードだとかミドル・テンポの曲だとか、何でも書けるようになったんだ。実験してみたりする自由の幅が広がったんだよ。そして結果的に、プロダクションではなく楽曲に重きが置かれることになったんだ。

ニール:このアルバムについてもうひとつ言えることは、僕らが北部イングランドにある自分たちのスタジオでレコーディングしたってことだね。それが音楽にある種のインパクトを与えたと思う。って言うのも、北部にいると、自分が何らかの音楽シーンのど真ん中にいるって感覚はなくなるし、少し孤立した感じがするんだよ。それから愛犬たちがそばにいたりとかして、リラックスすることができた。そのおかげで、僕らは本当に集中することができた。

クリス:うんうん。それに周囲に何もなくって、けっこう荒涼としているんだよね。

ニール:そうだね。

クリス:それが、僕らの書いている音楽に反映されていると思う。サウンドにも言えることだけど。

Q.ホーム・アンド・ドライ

クリス:えーと、これは僕らが最初に書いた曲で、リフの部分がはじめに浮かんだんだ。そしてそのリフが曲全体にずっと流れている。だからコード進行は曲全体を通じて一度も変化していないんだ。それで、歌詞、コーラス、真ん中のセクションがみなずっと同じコードになっている。そういうのって僕らにしては珍しいんだけどね・・・でも実際聴き手にはそんな風には感じられない。グルーヴが一貫して曲の中に流れ続けているんだ。で、同じ土台の上に、とても強力な3種類のメロディが奏でられているんだ・・・。前作では、僕らはより複雑なコード進行を用いる傾向にあったんだけど、今回はよりシンプルなロック的傾向にこだわることにして、そのうえにメロディをかぶせたんだよ。僕らにとってこれは、曲作りにおけるスタイルに変化だったね。

ニール:これはある晩、夕食をとった後で、ものすごい速さで書き上げた曲なんだ。クリスがあのリフをただ弾いていて、そう、ギターみたいに聞こえるんだけど、あれは実際にはキーボードのリフなんだ。えーと、そしてその周りに曲を肉付けしていった。そういうのって、僕らが(PSB)最初に始めた頃の曲作りのやり方と同じなんだよね。それから僕は腰を落ち着けて、歌詞を書いた。そして「こんなアイデアが浮かんだだけど、
ホーム・アンド・ドライってどうかな」って言ったんだ。そして歌ってみて、そこにハーモニーを加えてみたんだよ。それから徐々に歌詞の構想が膨らんで、違ったメロディが浮かんできた。さっきクリスが言ったように、同じコード進行に違うメロディが載っている。そして終わりのところで、クリスがこう言ったんだよね。「もし君がポール・マッカートニーだったら“Were going home(僕らは家に帰るところ)”って歌詞にしただろうね」って。

クリス:あのビートルズの曲はなんて言ったっけ

ニール:あれは確かアルバム「レット・イット・ビー」の1曲目じゃないかな(注:“トゥ・オブ・アス”)。ほら(歌う)♪Two of us dee, dee, dee, on our way back home(僕ら2人、ディーディーディー、家に帰るところさ)、そう、確かに彼はこう歌っているね。“We
re going home”。そう、だからこれはちょっとしたポール・マッカートニーの引用さ。

Q.ヴォーカルFX

クリス:オートチューン(注:リアルタイムにヴォーカルのピッチやイントネーションを補正する、自動修正プラグイン・ソフト)!僕らはシェールのやったやつにすっごく感銘を受けたんだよね。みんなそうだったろ?それで、えーと、オートチューンに魅了されたんだよね。あれを使うことによって生まれる、生音とエレクトロニックの交錯が気に入ったんだよ。

ニール:あれはとても微妙だと思うよ

クリス:僕らはあれを巧妙に使ったよね

ニール:かなり面白いよね。

クリス:オートチューンを効果的に使うには、調子っぱずれに歌わなきゃダメなんだ。

ニール:そうそう、ヘッドフォンをしたままあれを使って実際に歌ってみると、面白いんだ。あれがメロディに及ぼす作用が聞こえてきて、かなり面白い。っていうのも、あれのせいで声が1トーン高くなるんだ。でも、シェールのレコードで用いられていたのとは違うやり方だったんだ。僕自身は単に1つの新しい音だと考えているね。これを聞いた人はもちろん、「ああ、これってあのシェールが使っていたエフェクトだよね」って言い続けるだろうけど、実際はとてもたくさんのレコードで使われているしさ。

クリス:ガレージとかR&Bのレコードにはほとんどみんな利用しているんじゃないかな。

ニール:それからエールみたいな人たちも使っているよね。

クリス:これからもずっと定着するよ。

ニール:ヴォコーダーとよく似ているよね。僕らはいつもヴォコーダーの類を使ってきた。こういうのがすごくいいのは。

クリス:ダフト・パンクは”ワン・モア・タイム”って曲で、極端な使い方をしたよね?

ニール:うん。

Q.9月11日:米同時多発テロの影響

ニール:僕らは実際、このアルバムをニューヨークでミックスする予定になっていたんだよ。んー僕らはスタジオにいて、スタジオでパーカッションをレコーディングしていたんだ。パーカッションのオーバーダブの最後のへんをやっていたんだよ、あの911日。そしてこのアルバムのミックスのために、101日にニューヨークに向かう予定になっていた。ニューヨークで、マイケル・ブローアーって人と一緒にこのアルバムをミックスするつもりだったんだよ。彼はコールドプレイの最新作をリミックスした人なんだけど。彼は他にもボブ・ディランとか、例えばローリング・ストーンズとか、そういったいろんな人たちの作品をミックスしてきたんだよ。僕らはあの911日以降にニューヨークには行きたくなかったんだ。あの地で過ごすのは、哀しく痛ましいことだろうというのは明らかだったからね。アルバムをミックスしているときって、まあ実際今回ミックスしたのはマイケル・ブローアーなんだけど、僕らはいつも、毎日スタジオに顔を出すようにしてるんだ。そして1日おきにミックスをチェックしたりしてね。だから今回のニューヨーク行きは楽しみにしていたんだよね。どっちかというとホリデー気分でいたからさ。そしてあの事件以来は、そんな気持ちにはなれないなって思ったんだ。そしてマイケル・ブローアーも僕らに賛成してくれた。実際彼のほうからロンドンにやってきてくれて、彼と一緒に英国でミックスをしたんだよ。

 不思議なことにさ、結果的に起きたことではあるんだけど、「ホーム・アンド・ドライ」を聴いてあの曲が911日の事件について書かれたんだと思ってた、とある人に先日言われたんだ。実際にはあの曲はその1年前に書き上げたものなんだけどね。「ホーム・アンド・ドライ」に関して面白いのはさ、あれは愛する人が遠く離れたところにいる人についてのラブソングなんだけど、主人公はヨーロッパにいて、相手の人がアメリカにいるんだよ。そして飛行機でのたびを心配する気持ちが曲全体に満ちている。心温まる美しい曲なんだけどね。僕はいつもニューヨークから大西洋を越えて戻ってくるときって、そう、あの「all those dark and frantictransatlantic miles
暗くて荒れた/海を越えて)」という一節に表れているんだけど、真夜中に一人、大西洋の上を飛んでいるときってさ、眠れなかったり飛行機が揺れたりした場合、ものすごく孤独を感じる時間だって思うんだ。どこか荒野の真っ只中にいるような感じがする。そんな不安な気持ちがあそこに反映されているんだよね・・・。そしてなんというか・・・。もちろんあの911日以降、飛行機での旅は以前とは全く別の意味を持ったものになってしまったけど。
 
クリス:今は人々はたいてい、安全な自分の家でくつろいでいたいと考えるようになったと思うんだよね。

ニール:そうだね。

クリス:飛行機に乗って世界を飛び回りたいとか言う欲望って、僕の中には全然ないんだよ。安全上の理由じゃなくて、家にいて友達や家族と一緒にすごしたいっていう、そういう感覚からなんだ。

 (
以上、2002EMIブックレットより)

 

 

 


●「Disco3」収録のHome and dry (Blank & Jones mix))について

クリス:これは、僕たちが大学ツアーをやっていたとき、ケルンでの最後のライブのときに出来た。ホテルに戻るメルセデス・ベンツにすごくいいサウンド・システムが搭載されていて、僕はローカル・ラジオに合わせていた。ニールは別の車にいたけど、僕の車にいた人はみんな「ちょっと、聴こうよ。トランスはいいよね。流行ってないかどうかなんて誰も気にしないよ」って言っていた。で、僕らは音量を上げて、ホテルまでちょっとしたいい旅気分で戻った。で、その後ミュンヘンで、DJが誰だったか探してもらうためにラジオ局に電話した。それがBlank & Jonesで、次の日の午後、彼女がみんなとランチを取っていた。で、リミックスは生まれた。これがそれ。

ニール:土壇場で、僕らはこのアルバムを「Disco 3」にすることに決定したとき、他の「Disco」シリーズのアルバムを思い返した。で、これも入れるべきだとういのは明らかだったね。その時、僕らは「Here」のリミックスをやる際に、Blank & Jonesからのドラム・サウンドを使ったとわかって、彼らも同じオープニングがあったので、僕らはギリギリのところで編集室に戻って「Here」の始めの部分を切らなきゃならなかったんだ。まさに同じオープニングだったよ。

 (
以上、2002Literally26より)

 

 



クリス:この曲はよりギター志向、ナマ楽器指向のアルバムに収録されている。プログラミングではあってもね。ドラムスはあくまで本物のドラムスに聞こえるし、ほとんど全ての楽曲でニールがギターを弾いている。アレンジはよりベーシックだ。コード展開が最後まで変わらないのが面白いだろ。すごくダイレクトな曲で、さまざまなパートが同一のコードに乗って展開するんだ。とても純粋な曲だよ、皮肉じゃなくてね。

ニール:曲を書くときには、いつも美しいものを書こうと努力している。この曲がその好例だ。少なくとも僕にとってはね。とても美しくて誠実だ。切ないラブソングだけど、根底にあるのは「飛ぶことへの恐怖」だ。ニューヨークから、アメリカから帰国する飛行機に乗ると、何ていうか、とても陰鬱な気分になるんだ。よく夜のフライトで帰るんだけど、真夜中に太平洋上を飛んでいるときいつも荒れた大西洋を思い浮かべていた。時には乱気流に揉まれたりする。そしてあの寂寥感。機内の灯りは消されていて、小さな読書灯をつけない限り、周りはすごく暗い。それは信じられないくらい寂しい時間、寂しい場所だ。それがイヤでたまらないんだよ。その思いをこの歌に込めた。

 (
以上、2003POPARTブックレットより)


 

プロモーションビデオ(You Tube)




TVライブビデオ(You Tube)




2002
年シングルはUKチャート最高14



ニール:出た。
クリス:あはははは。
ニール:不評だったビデオクリップだ。僕は好きだよ。
―芸術性を追求したのかな。
クリス:レコード販売促進用ビデオだ。
ニール: 多分ね。僕たちはこのビデオを作ったとき、こういうのが斬新だと思ったんだ。残念ながらね。
―トテナム・コート・ロード駅だね。どうゆう経緯でビデオ製作に至ったの?
ニール:アルバム発売に向けてビデオを作ることになり、ウルフガングに頼んだ。このアルバムには彼が適任だと思ったから。僕らが考えていたストーリーは、男が女の子に恋焦がれるというものだった。だけど現場に行ったら、“違う内容にした”と彼に言われた。ははは。ネズミが走り回る様子がかわいい。5日かけて集めたんだ。
―曲との関連性はあるの?
ニール:読み取れるとは思うよ。ここが彼らのホームで旅をしているんだ。曲に出てくるようにね。場面が一転。
―別のビデオにも出てきたステージ?
ニール:そうだよ。
クリス:観客がいない。
ニール:日曜の午後だから。いつもとは格好が違って、ジーンズ姿だ。
MTVの反応は?
クリス:気に入られて良く流れたよ。
ニール:MTVアワードを取ったんだ。正当な評価だと思う。
クリス:セルフリッジでも流れた。食品売り場でも。
ニール:ハハハ。
―(ネズミが)人の気配を察したみたいだ。
ニール:そうだね。
―電車が来ないね。
ニール:合間を縫って撮影したから、何日もかかった。監督がビスケットをあげた。
クリス:やらせだ。
―全部ニセモノ?
ニール:一部だけ。ネズミは調教されている。個々に配役され、ギャラが高かった。
クリス:調教師付きだし。
―アートでポップじゃない。
ニール:でも歌はポップさ。ポップ音楽に合うアートだ。

聞き手―クリス・ヒース

 (
以上、2003POPART/DVDコメントより) PV監督・・・Wolfgang Tillmans

 

 


★用語・人物メモ★

Were going home”・・・歌詞カードには正式には入れられていないが、2コーラス目の「♪Home and dry」の後、クリスのコーラス(というか囁き)Were going home”が入る。多分、歌の主人公が思いを馳せる出張中の彼氏役だと思われるが、この一言が曲をグッと引き締めていて素晴らしい効果を生んでいる。

シェール(1946-)・・・本名シェリリン・サーカシアン・ラ・ピエー。アメリカのシンガーで女優。夫のソニー・ボノとのデュオ、ソニーとシェールでデビュー。2人がここで話題にしているオートチューンを使用した曲は、1998年のヒット曲「Believe」だと思われる。

ガレージ(ガレージ・ロック)・・・1960年代と、2000年代に入りまた台頭しているロックのスタイル。6070年代の代表的バンドはイギー・ポップ&ストゥージズ、ベルベット・アンダーグラウンド、パティ・スミスなどで、2000年代に入るとホワイト・ストライプス、リバティーンズなど。

エール・・・ニコラとジャンのフランスのポップ・デュオ・バンド。ソフィア・コッポラ監督の1999年の映画「ヴァージン・スーサイズ」の音楽が全面的に使用されたのがきっかけで世界的に名が知られるようになった。

ダフト・パンク・・・フランスのハウス・ニューウェーブ・バンド。メンバーのトーマとギー・マニュエルは素顔を公開していない(PVやライブでは仮面をつけている)。松本零士のファンで、「ワン・モア・タイム」のPVにキャラクターを使ったアニメを使用している。

Blank & Jones・・・ジャーマン・トランスのユニット。Jan Pieter Blank (1971-)René Runge (1968-)2人。

セルフリッジ・・・ロンドンのオックスフォード・ストリートにあるロンドン最大のデパート。ここにはギャラリーがあり、PSBのサイン会などのイベントが催されたことがある。

Wolfgang Tillmans(1968-)
・・・ドイツ出身の写真家。2008年ベルリン映画祭で彼のドキュメンタリー映画が出品され、ニールとクリスも出席していた。ポートレートが得意。ちなみに今回のアルバムからのシングルのPVは、全て写真家が監督をしている。

 




 80年代の“アゲアゲのテンポからは、2人がこんな曲を作るなんてちょっと信じがたいほどの変化だ。それでいて、絶対にPSBにしか聞こえないんだから、やっぱりすごい。21世紀最初の代表曲だ。
 アルバムのファースト・シングルカット曲。アコースティックな雰囲気のある、心がほっとするような曲だ。もどかしくて言葉にならない
愛しい気持ちを的確に表していると思う。離れているからこその愛しい気持ち。そういう誰にでもある気持ちを共有できるのがうれしい。“Were going home”はとてもいい言葉だよね。誰か愛する人が欲しくなる曲。



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