RELEASE1-9


The night I fell in love

 


原文歌詞はこちらでご確認ください



僕はバックステージにいた
僕はこのラッキーな出来事が信じられない
彼は僕に近づいてきて
最高の笑顔で
ハローといったんだ
彼はとても丁寧にしゃべるのでとても驚いた
僕が、あなたのステージが好きだというと
彼は微笑んだ
夜にはよくあることだと思うけど・・・
そう
僕は恋に落ちてしまった

僕たちは、彼の部屋に行った
彼はビデオカメラを持っていたけど
僕はちょっとナーバスになった
僕は口ごもらないようにせいいっぱいだった
彼はこう言っていた
「君が僕のステージを楽しんでくれてよかったよ
ファンたちは今夜も楽しんでくれたようだ
もっと見たくはないかい?
君を特別招待したい
僕のプライベート・パフォーマンスに・・・」
僕はすっかり夢中になった

彼になぜって聞かなかった
彼はとても普通の男に見えたと
僕らは2人だけの
秘密の恋人同士に
なれると言った
それから、ジョークも飛ばした
「ヘイ、
君はスタンって言う名前じゃないよね!
僕らは一緒にいるべきだと思わないか?」
そして彼はとても情熱的だった
彼を評価するなら
10
点満点中の9
そのとき
僕は恋に落ちてしまったんだ

彼に質問した
あなたは同性愛を
毛嫌いしているってよく聞くけど・・・と
すると、
彼は肩をすくめた

翌朝、僕たちが目覚めると
彼はきさくで
朝食のとき、冗談を言っていた
Dr.ドレーのこと、友人や仲間の事・・・。
僕たちは、どちらからも
次に会えるかどうかを聞くことはなかった
それもクールだと思ったから
だって、僕はもう学校に遅刻してしまう
でも
あの夜は本当に恋に落ちた


Written by Neil Tennant/Chris Lowe


Produced by Pet Shop Boys


Q.“ザ・ナイト・アイ・フェール・イン・ラヴ”

()

クリス:うんうん、極めて簡単に言えばね。

ニール:一言でいうならね、うん。このアルバムの曲は、現代の生活を基に物語仕立てになっているということはさっきも言ったけど、(中略)ここではエミネムを取り上げたんだ。僕らがこのアルバムの曲を書いているとき、ちょうどマスコミがエミネムの同性愛嫌悪について大騒ぎしていたんだ。実際僕らはエミネムがすごく好きなんだけどね。事実エミネムはここ数年の間に現れた中で、非常に重要なアーティストだと思っているし。つまりさ、彼はすごくすごく想像力に富んだソングライターであり、アーティストであり、またパフォーマーとしては信じられないほどのカリスマ性ももっている。でも、彼の同性愛嫌悪はすごく難しい問題なんだ。レコードの中で何度も言い続けている”ホモ野郎”だとか、ああいう差別的姿勢についてのエミネム側の弁解では、彼は曲の中では本当の自分自身ではなく、キャラを演じているんだってことなんだけどね。彼はアメリカやアメリカの人々が様々なテーマに関して気持ちを実際に代弁している。大きな物議を醸しているけど、僕は彼を信じようとしているんだ。彼の手法を採用して、僕も何かのキャラクターを演じながら曲を書いたら面白いんじゃないかって思ったんだよ。そうやって書いたのがこの曲なんだ。僕は実際、自分が英国のドラマ『クイーア・アズ・フォーク』の主人公であると想像してみたんだ。そのドラマはゲイの恋愛模様についての物語で、とても、とても大胆だったんだよね。この曲の中で、まだ中高生の少年がマンチェスターでエミネムのライヴを見に行く。物語の舞台は一貫してマンチェスターなんだけど。そして彼はバックステージ・パスを手に入れることに成功し、エミネムと一緒に、彼の泊まっているホテルに戻ることになるんだ。そしてエミネムが本当は実はゲイだったことがわかって驚くんだよ。そしてそれが曲中で順を追って描写されていく。まずどんな風にして少年がエミネムと出会ったか、そしてエミネムが彼に何と言ったか、それから彼はエミネムに同性愛嫌いの件について尋ねる。”彼に尋ねてみたんだ/どうしてこれまでさんざん/彼が同性愛嫌いとかそういうことで/非難されたって話を聞かされてきたのかと/彼はただ肩をすくめた”ってね。僕はエミネムがそういう立場にいるのが想像できたんだ。それから翌朝、彼らは一緒に朝食をとる。そこでエミネムはDrドレーについて語るんだ。そして、少年は明らかにもう2度とエミネムに会うことはないんだけど、それでも急がなくちゃならないんだよね。なぜなら、学校に遅刻しそうだと気付くからさ。そんな感じの、ちょっと笑えるほんわかしたストーリーなんだよ。”スタン”がちょっと笑える不気味なストーリーであるのと同じくね。これってぼんやりと考えを巡らすには面白い題材だと思うんだ。なぜなら、エミネムは、どうしても同性愛というテーマにこだわっているからね。

クリス:このアルバムの歌詞はみんな、本当にものすごく優れていると思ったよ。期待通りかって?自分が何を期待しているかなんてわからないよ。

ニール:面白いんだよね。なんていうか、優しいユーモアがあるんだ。

Q.事実に基づく物語

ニール:歌詞を書くという面において、僕が最近熱を入れてきたのが、そして今も強い関心があるのが、それなんだ。以前にも少し流行ったけど、今回ほど強烈ではなかったね。例えば「アイ・ゲット・アロング」も事実を基にしている。「バースディ・ボーイ」も事実を基にしている。これは事実に基づいている、これらの曲は完全に物語なんだ。「ロンドン」は事実が基、完全なストーリーものになっているものが4曲あるけど、それらは映画だとか、TVドラマだとかにもできるんだよ。映画やTVドラマにできるくらい、しっかりしたキャラが歌の中にいるから。同時にまた、人間臭くて実際にありえる話に聞こえるし。そういう曲作りの仕方がすごく面白いって思うんだよ。

 (
以上、2002EMIブックレットより)


 *この曲は、裏レビュー、マーガレット通信Vol.52「一曲に固執する」シリーズでも取り上げています。


★用語・人物メモ★

エミネム(1972-)・・・マーシャル・ブルース・マザーズ3世。「スタン」は熱狂的エミネムファンのことを書いたエミネムの曲名。「We should be together」はエミネムの口癖で、歌詞。エミネムの攻撃対象はゲイや女性、自分の身内にまで及ぶが、逆にエミネムは“ゲイが好みそうなタイプ“だったゆえ、ゲイの罵倒で反応したのはやはりゲイだったという皮肉。エルトン・ジョンはエミネムとの共演を強く望み、ステージで抱きしめた。その後、エミネムは「PSBを車で轢き殺す」という歌詞が入った曲Can I Bitchを作っている。ちなみにエミネムの伝記本「ダークストーリー・オブ・エミネム」には、PSBのインタビューが少し入っていて、クリスが「エミネム大好き」「エミネムのフィギュアを部屋に飾っている」という、皮肉っぽい答えをしている。

クイーア・アズ・フォーク(Queer as folk)・・・1999年、イギリスの民放チャンネル4で放送した、ゲイの本格的恋愛ドラマ。全10話。原作・製作はラッセル・T・デイヴィス(その後国民的SFドラマ「ドクター・フー」の最新シリーズを手がける)。タイトルの意味は、ウェールズの故事から来ていて、「普通の奴ほどヘン」という意味と、「家族的なゲイ」とう意味のダブル・ミーニング。
その後アメリカでリメイクされ、ケーブルTVながら大ヒット。オリジナルを大幅に加筆したシリーズ5、全82話を2006年に終了したが、いまだに登場人物を演じた俳優は人気がある。シリーズ中、PSBの「Break 4 love」が印象的に使われ、アメリカのクラブ・チャートで1位を獲得。
マンチェスター(米版:ピッツバーグ)のゲイクラブ・シーンの有名人、超強気でリッチなプレイボーイのスチュワート(米版:ブライアン)を主人公に、彼にひそかに恋する内気で優しい15年来の親友ヴィンス(米版:マイケル)、そしてスチュワートに熱烈に恋してしまう一途な中学生ネイサン(米版:ジャスティンは高校生)が巻き起こす、笑いあり涙ありの、生々しく刺激的なストーリー。サントラにスウェードやパルプなども使用され、音楽ファンにも人気があった(米版でも毎回ナイトクラブのシーンがあり、全てのシーズンのサントラが発売された)。初回、一夜をともにしたネイサンをスチュワートが車で派手に学校まで送りつけ、同級生の度肝を抜いたシーンは痛快。





 嫌がらせなのに、こんな切なくてイイ曲を書いちゃって、もうPSBのイヂワル!って感じです。
歌の中で、2人が朝を迎えた後、コーラスで“Secret lovers
というのが入っているのが、イヤミ的にもすごく利いていると思う。なのになんだか10代の若い性とセクシャリティにこだわるのも、ニールの「こんなの、あったらヨカッタよね」的な遠い目をして微笑んでいるさまが浮かびますわ。でも、こういうのをけしかけるのって、けっこうクリス的なんじゃ、とも思ってしまいます。



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