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♪♪妄想乙女マーガレット通信★vol.75♪♪
別冊「まりりんの日記」/ペットさん(ペット・ショップ・ボーイズ)偏愛フリーペーパー
第75号・2009年4月発行★発行人:まりりん石原、執筆乙女:マーガレット(題字:ニール王子)
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▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲アルバム「YES」初聴レビュー▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「YES」が発売されて早1ヶ月あまり。私の場合、“次のアルバムが出て、初めて前のアルバムの評価・位置づけが決まる”ので、まだまだ「YES」の研究&レビューはこれからなのですが、それでも“最初に聴いた印象はけっこう大事”とも言えますので、ここでファースト・レビューをしておきます。この時点ではまだ歌詞の訳をやっていないので、歌詞の深い内容はまだわかっておりませんが、主に耳からの情報で語っております(ブログに加筆)。
「Yes」ダイジェスト(Youtube)
「Love etc.」(3月5日のブログに加筆)
この曲は完成度は高いと思うし、曲は嫌いじゃないし、実際すでによく口ずさんじゃっているけど、なんか「愛が全てに勝る」という詞のメッセージが薄っぺらいと感じていた。
PSBって、ざっくり言っちゃえば、ノー・メッセージだと私は思っている。メッセージよりも、よりピュアな音楽の本質みたいなものがメイン・ストリームで、歌詞は"たまたまついてきた"あるいは、ニールの世界の稀なる楽器=声を奏でるためのパート、くらいに思っている。もちろん大事だよ、大事なんだけどね。
で、インタビューを読んだら、「Love etc.」の歌詞、案の定、ニールは「自分のパーソナルな考えとは違う」と言っているじゃないですか。
やっぱりね。そう思った。過去、さまざまな愛についての名言を吐き、裏も表も天国も地獄も知っている恋多き男・ニール・テナントが、そんなこと思っているハズないって。
インタビューでは「Love etc.」は「Rent」(愛とカネは同等)とは逆の歌ですね、という点にも触れられている。「Rent」はもう20年以上も前の曲だし、同じ人間でも20代と50代では考えが変わっていて当然だと思うけど、それでも「Rent」がいまだ名曲として力強く輝く理由は、やっぱり作り手の心の方への入れ込みが「Rent」の方が勝っているのではないかと思う。
クリエーターのはしくれから言わせてもらえば、無難なものより、たとえマイナスでもプラスでも、力を持った作品というのは、自分が強く思っていることでないと、自分自身で共感できないし、社会に出しても強烈な光を放つことはできない。作品というのは、ほとんど「vs(対)自分」であって、いずれ他の人にも共感できるものになって社会に認知されて、ビッグ・アーティストになって行くのはまた別問題だと思う(優れた作品なら、そうなるべきと思うが)。
つまり、「Love etc.」はみんなが「ああ、まあ、そうだね」って思っても、鮮烈なデビュー曲・10年後も名曲とたたえられる作品にはならない。PSBは初期の頃、「Rent」をはじめ、強烈な光(マイナスでもプラスでも)を放つパーソナルな考えを織り込んだ作品を発表し続けたから、今の地位があるんだと思う(私は最初に「歌詞に意味なし」って言っちゃったけど、存在そのものにはじゅうぶん意味はある)。
すでに世に出ているファーストシングル。そのときにも書いたけど、メッセージがありきたりで薄い。なぜならニールは”愛が全て”とは本当には思っていないから。ただ、アルバム中一番ダンサブルで、キャッチーで、ファーストシングルには相応しいと思う。
「All over t
“傑作”か“やりすぎ”か、すごく評価が分かれると思う。チャイコフスキーとチャネリングする男・クリスからすれば、いつかどこかでチャイ子を使ってみたかった気持ちはじゅうぶんわかる。が、チャイ子、前に出すぎ。そこしか印象に残らない恐れがある。チャイ子マニアの2人が、なぜ鉄板中の鉄板「くるみ割り人形」を選択したのか。彼らなら、チャイ子の隠れた名作とコラボレーションできたのでは?でも、チャイ子の部分を除けば、素晴らしいPSB節で、涙が出る。
「Beautiful People」
こう名作傑作ぞろいの曲のなかに紛れ込んでいると印象に残りにくい、不運な曲だと思う。ランニング・オーダーに完敗した。でもこういうアンラッキーな曲は、アルバムのなかに必ず1〜2曲はあるんだよね。これが今回のそれ。ちょっとムード歌謡みたいなイントロは懐かしいような気がして、日本人なら嫌いじゃないと思うけど。
「Did you see me coming?」
まえにも同じこと書いたけど、イントロからしてマー兄貴のギターがグッと来る、「RELEASE」に入っていなかったっけ、これ?と思うような、前向きで明るいのにちょっと切なくなるような感じがPSB節。アルバム中で一番乙女度が高いのでは?ああっ、眩しい。キラキラしてる。(セカンド・シングルにケッテイ)
「Vulnerable」
ああ、これも切ない系かも。ちょっと、うつ病を悪化させるような(人聞きが悪い表現だが)、センシティヴな状態で聞き込むと、自分の殻に閉じこもってしまうような危うさがある。タイトルだって「傷つきやすい」だし。ニールの声はやさしいけど。ねえ、こういう昭和の歌謡曲、なかった?
「More T
これ、BILINGUALのFurt
「Building a Wall」
クリスがセリフを喋る曲。改めてニールの世界遺産的な声に対するボーイズ的イイ声は、もちろん悪くはないんだけど、曲全体がちょっと強くて、ここまで来た全体のメロウな流れを止めちゃっただろオイって感じ。まあ、ダラダラと流れ切ってしまうのもどうかと思うし、それが悪いとは思わないので、“よくない方の曲”に入れてしまうのは早合点かもしれない。歌詞がわからなくても、政治的な匂いがします。
「
タイトルのイメージと全く逆をつかれて、スロー・バラードだった。まるで「BEHAVIOUR」に入っていそうなメロウっぷり。なぜか、どこか海外の列車に乗って、車窓を眺めているような、静かでありながらもどこかに向かっていくような感じがした。こんな曲を、今でも作ってくれることに感謝したいです。泣かせたいのっ、泣かせるつもりでしょ。
「Pandemonium」
決して嫌いじゃない、このアップテンポ。「Can you forgive
「T
メロも綺麗で、なんとも内省的に聞こえる。年をとっても自分を自分で"弱い"と認められる(実はまだ歌詞はよくわかってないけど)のは、素晴らしいし、うらやましい。弱いのはとても人間的で、魅力的。強い、美しい、金持ち、そんなことに魅力を感じない人間としては、グッと来る。やっぱり日本の昭和の歌謡曲っぽい要素があると思う。彼ら自身は気がついていないと思うけど、この共通する“感じ”は何なんでしょうか、誰か学術的に解明して欲しい!
「Legacy」
この曲は、唯一、初聴で“あんま好きじゃないかも”っていえる。計算かもしれないけど、ガチャガチャしてとっちらかっているみたいに聴こえる・・・なんで?・・・打楽器のせいかな。「ごちそうさま」を言うためのアルバムのシメとしての役割、余韻がやや弱いかなぁ・・・そこまで完璧を求めちゃいけないだろうか・・・。前作「Fundamental」のシメ「Integral」が超ヤバでビシっと決まっていただけに。
日本版「YES」にはボーナス・トラックとして「Love
etc.」のPet S
「T
フィル・オーキーとニールとのデュエット風・・・80年代には考えられなかったライバルたちの、まさしく夢の競演。切羽詰ったようなフィルの声は相変わらず大好きだ。洋楽好きアラフォーのツボをついてくる。ああ、なんて卑怯。これまでPSBのヒューマン・リーグの交友関係が語られてなかっただけに、どういう経緯でフィルが参加することになったのかを聞いてみたい。
総括
「YES」はハウスでもテクノでもポップでもロックでもないような・・・強いて言えば“歌謡曲”的な聴き心地がするのは日本人ゆえだろうか。とにかく、懐かしいのである。どこかで聴き馴染んだような、そんな音がする。だからか、40代の「昭和の歌謡曲」と「80年代洋楽」を青春時代に聴いて来た人間にとっては、このアルバムが最高!ベストアルバムでは!と狂喜乱舞した理由かもしれない。20代にとっては「新しい」のかもしれないが。
私はPSBの次に、フランスのヴァリエテ(ポップス)・シンガーのミレーヌ・ファルメールの大ファンなのだけど、この「YES」は、ミレーヌの90年代のアルバム「L’AUTRE」「ANAMORPHOSEE」あたりにすごく近い。両方を聴き倒した私が言うんだから間違いない。PSBとミレーヌは実際に共通点が多い。耳あたりの良いエレクトロ・テクノ・ポップに隠されたドス黒さや皮肉、プロ(DJ)ウケする、ゲイと乙女のファンが多い、etc…。事実、少なくとも90年代、ニールはミレーヌのファンだった。「Pandemonium」など、ミレーヌのために書かれた曲と言っても過言じゃない。ミレーヌは現在のカイリー・ミノーグと非常に近い位置(キャラ)にいるので、あながち妄想ではないと思う。
もちろんアルバム評でこんなことを言っているプロは皆無だけど、これはファンだからこそ感じた素直な感想だ。