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♪♪妄想乙女マーガレット通信★vol.15♪♪
別冊「まりりんのの日記」/ペットさん(ペット・ショップ・ボーイズ)偏愛フリーペーパー
第13号・2005年12月発行★発行人:まりりん石原、執筆乙女:クリスティーナ・マーガレット・ロウ

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こんにちは、マーガレットです。もうすぐ年末、だからって関係ないけど、マーガレット編集のCD第3弾を作ってみました。今度のテーマは「PSBinカヴァー」よ。意外にカヴァーはあるので、並べてみたら面白いかなーっと。ちなみにカヴァーの選曲はクリスに任されているとのこと。なんだか「プリシラ」のサントラみたいになっちゃったわ〜。聞き比べてみてね。これも欲しければ焼きますのでご遠慮なく。70分。

PSB in COVER

 

1.ゴー・ウエスト/PSB

2.ゴー・ウエスト/ヴィレッジ・ピープル

3.イッツ・ア・シン(哀しみの天使)/PSB*オリジナル
4.アイ・ウィル・サヴァイヴ(恋はサヴァイバル)/グロリア・ゲイナー
5.ジュ・テーム…モワ・ノン・プリュ/PSB
6.ジュ・テーム…モワ・ノン・プリュ/セルジュ・ゲーンズブール avec ブリジット・バルドー
7.ガールズ・アンド・ボーイズ/PSB
8. ガールズ・アンド・ボーイズ/ブラー
9.ホエアー・ザ・ストリート・ハヴ・ノー・ネーム(アイ・キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・ユー)/PSB
10.君の瞳に恋してる/ボーイズ・タウン・ギャング
11.約束の地
12.オールウェイズ・オン・マイ・マインド/PSB
13.ルージング・マイ・マインド/PSB
14.アイム・ノット・スケアード(モンマルトルの森)/PSB*オリジナル
15.ハロー・スペースボーイ/デビット・ボウイ

 


1.ゴー・ウエスト(93)/PSB
 
言わずと知れた世の中で“PSBの一番よく知られている曲”のひとつ。でもそれがカヴァーなんてファンにはちょっと悲しいかも。原曲のゴリゴリ・マッチョな男ユニゾンをニールのエンジェル・ヴォイスにしただけで世界的に広まった。クリスが(この“ゲイの楽園に行くこと”を歌ったゲイソングを)「好きだから」という理由で,「(ゲイすぎて)最悪!」というニールを説き伏せてカヴァー。理由はもちろん、ゲイ社会・楽園の崩壊を自らの痛みとして世の中に発せずにはいられなかったクリスなりの誠意だと思うのだけど。でも結果、この曲はオリジナルをはるかに超えてヒット、結果計らずしてニールはカムアウトし、クリスは沈黙の世界に引きこもることになった。この曲をゲイ賛歌だと知らないたいていの人は、「何かの応援歌」「東欧・ソ連・社会主義崩壊の歌」と思っている。それを利用してPVではクレムリンの前で撮影。良くも悪くも、PSBのキャリアの区切りのひとつ。PSBは「ニュー・ヨーク・シティ・ボーイ」(99)でもヴィレッジ・ピープルそっくりのマッチョコーラスを使っている。
2.ゴー・ウエスト(オリジナル12“ヴァージョン)(78)/ヴィレッジ・ピープル
 
もともとヴィレッジ・ピープルは70年代音楽界の問題児だった。仕掛け人はゲイでありながらゲイをイロモノとして(まるで日本の最近の芸能界のように)世に放った。水兵、インディアン、制服警察官、カウボーイ、みんなゲイのアイコンのようなコスプレ!70年代のゲイ・リブ、ウーマン・リブの社会現象もあってそこそこヒットしたことを思うと「面白い」という捉えられ方だったろうが、保守的アメリカの社会では所詮一発屋。80年代に入りゲイがエイズという社会問題と絡められるようになると、ゲイの楽園はこの世のものではなくなってしまったのだから。ヴィレッジ・ピープルは80年代はじめには解散。PSBのカヴァーがヒットし、映画『プリシラ』で使われたこともあり、95年にベスト版が出た。

3.イッツ・ア・シン(哀しみの天使)(
87)/PSB
 
これはカヴァーではなく、れっきとしたニール&クリスの作ったオリジナル曲。デビュー前に作ったデモテープにすでに入れていたとか、15分で作ったとか、逸話はいろいろあるものの、デレク・ジャーマンのインパクトあるPVと合わさって英国ではナンバー1ヒットになった。歌詞も曲も重厚でゴージャスで、まるでシェイクスピアの悲劇のようだけど、本人たちはこの曲をもっとライトに考えているようだ(ベストアルバム「POPART」でも、この曲は「ART」ではなく「POP」に選別している)。PVの”(カトリック的)罪によって火あぶりにされる囚人から一転し、ライブでこの曲はニールが悪魔のような三叉鉾を持ったゴージャス司祭(美しき悪人に見える)に扮してカトリックをおちょくっている。このオリジナル曲を「カヴァー」アルバムに入れた理由は、次のトラックの解説で。

4.アイ・ウィル・サヴァイヴ(恋はサヴァイバル)/グロリア・ゲイナー
 
ライブではたいていの場合「イッツ・ア・シン」は「アイ・ウィル・サヴァイヴ」にシフトする。よく聞けばこんなに似ている曲もない。そして「深刻・重い内容」から「ライトなディスコ」!この曲を聞くと、すごく「ディスコ」(クラブではない、あくまで70〜80年代のそれ)を感じざるを得ない。2つの曲のコラボは、PSBがいかにディスコな側面を持つミュージシャンであるかを考えさせられてしまう。残念ながらライブでしか披露しないため2つの曲をミックスしたトラックはリリースされていないが、見事なくらい融合している。同じくライブ(94年の「ディスカヴァリー」ツアー)では、これも“ザ・ディスコである「リズム・オブ・ナイト」をPSBオリジナルの「レフト・トゥ・マイ・オウン・デヴァイセズ」とミックスしている。ちなみに「ディスカヴァリー(DISCOVERY)」も「DISCO」+「VERY」である。

5.ジュ・テーム…モワ・ノン・プリュ(
99)/PSB
 
なぜこれをカヴァーしようと思ったかわからないけど、元曲とはまったく違ったアレンジで「どこがジュ・テーム・モワ・ノン・プリュだよ!」と思わず言ってしまう。サム・テイラー・ウッド(女性)のあえぎ声+低くささやく男性声(クリスの声ではないかという指摘も)は、PSBファンからはダントツで「嫌い!」という評価が多い。ゲイ的視点から見れば、映画のテーマでもある”ゲイ男性と女性との肉体だけの関係“というのは物議をかもしそうだ。まあ、あいまいな人も多いと思いますから。私的には元とは全く違うPSB的(というよりクリス的)音が、それはそれで癖になりますが。
 フランス語を習っていた人間から言わせてもらうと、このタイトルはとっても紛らわしく間違った文法をわざと使っています。「モワ・ノン・プリュ」は文法的に有り得ない。「モワ・オ―シィ(僕も愛している)」か「ノン・プリュ(僕は違う)」としかならない。だから邦題は「愛している・・・僕も、そうじゃない」ということになっています。


6.ジュ・テーム…モワ・ノン・プリュ/セルジュ・ゲインズブール avec ブリジット・バルドー
 
言わずと知れた「フレンチ・エロ歌謡」(クリス談)。映画ではジェーン・バーキンがゲインズブール(当時は夫婦)とデュエットしていたが、このヴァージョンはバルドー(こちらも恋人)が歌っている。実際の恋人同士でいちゃついているのって、じつに気まずい。ゲインズブールはとっとと死んで正解だったかも。
 映画の内容は、行きずりのトラック・ドライバーでホモカップルのイケメンに横恋慕したジェーン扮する少年にしか見えない女の子の不毛なセックスの話である。ど〜してこれにPSBが注目したかはわからない。その後の『トラック・ドライヴァー・アンド・ヒズ・メイト』(トラック・ドライバーとパートナーがイチャイチャする歌)を作らせるきっかけになったのかな。


7.ガールズ・アンド・ボーイズ(
94)/PSB
 
もともとこの曲はPSBがプロデュースを手がけた縁もあり、ライブで歌っている(「パニナロ95」シングルのカップリングに入れられているが、音源はライブである)。一見するとさわやかそうなタイトルのブラーのこの曲をなんでPSBかというと、「男の子になりたい女の子」と「女の子になりたい男の子」のことを歌った曲である。なーんだ、そうかって感じ。わかりやすいなあ。たしかブラーのデイモンが「そういう性別についての複雑なところがPSBに気に入ってもらった理由」と語っていた。これも「ディスカヴァリー」ツアーで披露されたもの。このツアーはさわやかさ皆無のマッチョなダンサーのことを思い出してしまうのよねえ。

8. ガールズ・アンド・ボーイズ(
94)/ブラー
 
ブラーといえば、オアシス、レディオヘッドとともに90年代ブリティッシュ・ロックを代表するバンドである。イギリス人の誇りである。「若いヤツが出てきたなあ」と敵視するのではなく、積極的にカラんでいく(そしてPSBカラーに取り込んでしまう)のがPSBらしい。
 ブラーは(英国人特有のひねりはあるものの)健全な成年男子というイメージが強いので、このようなテーマの曲があるのは意外に意外かも。この曲に関しては、ブラーのオリジナルバージョンが良いなあと感じる。全く関係ないけど、現在放送している日本のミルクのCMに出てくる牛乳パックのキャラクターは、ブラーの「コーヒー&TV」PVのキャラの丸パクリではないかと思うんですが…。


9.ホエアー・ザ・ストリート・ハヴ・ノー・ネーム(アイ・キャント・テイク・マイ・アイズ・オフ・
ユー)君の瞳に恋してる(’91)/PSB

 カヴァーとして最も有名で物議をかもしたのはこれかも。当時はU2(というかボノ)との確執が伝えられていたが、現在ではそれは否定している(何しろ当時は2組のミュージシャンは仲が悪かった)。重いテーマの曲と軽いノリをミックスするというのは「イッツ・ア・シン」+「アイ・ウィル・サヴァイヴ」と同じ手法。シングルカットされただけに、衝撃も大きかった。でもみんな意外に合うじゃん…と思ったはず。クリスが頭を使いながらニヤニヤしながら作ったかと思うと、笑えます。

10.君の瞳に恋してる(
82)/ボーイズ・タウン・ギャング
 ボーイズ・タウン・ギャングもフランキー・ヴァリ(67)のカヴァー。ダイアナ・ロス、グロリア・ゲイナー、ローリン・ヒルなど、古今東西あらゆるミュージシャンにカヴァーされてきた名曲である。この高揚感ったら、ない。そしてその高揚感はPSBとかなりの共通点を感じる。PSBのおかげで、U2のオリジナル「ホエア・ザ・ストリート・ハヴ・ノー・ネーム(約束の地)」がこの曲にシフトしないと物足りない。恐ろしいもんである。個人的には「♪アイ・ラブ・ユー・ベイベー」と、あくまでバカっぽく「ベイベー」と言ってほしいため、ZARDのカバーは「ベイビー」なので失格!

11.約束の地(88)/U2
 アイルランドの硬派ロックバンド。少なくとも80年代までは。「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」など聴くと、今でも涙が出ます。でも、当時PSBは彼らを「理想ばっかりで実態がない」と批判していました。どっちも好きなんですよ〜私は。ただ、昔の曲は確かに理想論だし、今の曲は、ややアメリカ寄りでロック魂を失っているかもしれないとも思うけど。ボノのカリスマ性は変わっていないのか。

12.オールウェイズ・オン・マイ・マインド
 言わずと知れた、エルビス・プレスリーの名曲。TVのエルビス没後10周年(クリスは100周年と間違えた…いつのヒトだよ!エルビスはあまり好きじゃないとか言ってたっけ…)の企画に合わせてカヴァーされたものを、シングル・リリース。全英1位になり、その後リミックスアルバム『イントロスペクティブ』に長いヴァージョン(『イン・マイ・ハウス』とのリミックス)が入れられた。でも、あまりにもクールな仕上がりに、エルビスファンからはずいぶんバッシングを受けたようだ。

13.ルージング・マイ・マインド
 元はステファン・ソンドヘイムの71年のミュージカル「フォリーズ」からの曲。PSBがプロデュースしたライザ・ミネリのヴァージョンのカヴァー。ライザ・ミネリといえば、言わずと知れたゲイ賛歌映画『キャバレー』の大スター。この曲はPSBのシアトリカル・ライブ「パフォーマンス」で使われていた。ライザのアルバム(PSBプロデュース)『RESULTS』では、ライザがPSBの曲を多数カヴァーしている。

14.アイム・ノット・スケアード(モンマルトルの森)/PSB

 PSBがはじめて他人に提供した曲のセルフカバー。提供先はエイス・ワンダー。パッツィ・ケンジットとはもうすこし絡む予定だったらしいけど、なぜかパッツィ側のエージェントから、これ以上のコラボを拒否されたようだ、なぜか。どうしてもエイス・ワンダーのヴァージョンが見つからなくて残念(私はいまだに当時エアチェックしたエイス・ワンダー版のPVは持っているけど)。

15.ハロー・スペースボーイ/デビット・ボウイ

正確にはカヴァーではないが、デビット・ボウイとブライアン・イーノが作った曲をPSBがアレンジ&ヴォーカル参加。PSBとしてのリリースはされていないが、デビット・ボウイのシングルとPVで聞く事ができる。ライブではニール&シルヴィアのヴォーカルで披露された。ボウイファンのニールが、強引にボウイを宇宙人に回帰させたといっても過言ではない。意外とPSBって力技が得意です。

*いろいろと探したのですが、どうしても2バージョン入手できなかった曲もありましたのでちょっと未完成な感はありますが、並べて比べてみるとなかなか面白いです。
●その他のカヴァー●
『サムホェア』…バーンスタイン作曲の「ウエストサイドストーリー」からの曲。97年のツアーのタイトルでメイン曲でもある。ドラマチックな曲。
『オールライト』…89年のシングル。スターリング・ヴォイドの元曲をアレンジ。世界平和と音楽賛歌。


★★★★今日のお写真★★★★

 再び仲良し写真。80年代の終わりごろかな。これはジャケットではないとは思うけど、同じようなショットがどこかで使われていたと思うから、れっきとした公式写真で、決してプライベートのじゃれあいではないはず。クリスがニールのカツラを外そうとしているようにも見えます。しかもこのクリスはジョニー・マーにそっくりです(一瞬ジョニーかと思ったくらい)。
 それにしても、デビュー前後、ロンドンとニューヨークのアパート(ニールが出版社での仕事のために借りていた)に、クリスはずっと同居していたんだよね(ファーストアルバム『プリーズ』の内ジャケはその部屋で撮られているものも入っている)。やっぱり不思議な関係だと思う。

 

 


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