YES 1-7

Building a Wall


原文歌詞はこちらでご確認ください



保護
防害
発見
拘留
これ以上、亡命する場所はない

僕は壁を建てている
すばらしい壁を
君を遠ざけるほど高くはないけど
僕を閉じ込めるには十分だ
僕は壁を建てている
すばらしい壁を
君を遠ざけるほど高くはないけど
僕を閉じ込めるには十分だ

当時の空襲被災地域
僕たちは廃墟の中のスパイだった
なんて早熟な野蛮人たち
テレビで僕たちは
冷戦を見た

保護
防害
発見
拘留
これ以上、亡命する場所はない
僕は世界を後にする
すべてが間違っている
人間たちがやっていることよりも
やっていないことの方が多い
僕は壁を建てている
すばらしい壁を
君を遠ざけるほど高くはないけど
僕を閉じ込めるには十分だ

イエスと
0011ナポレオン・ソロ」
シーザーはガリアを征服した
百人隊長を
ローマの壁で偵察しながら

「森と木を通り抜けても
海まではまだ遠い
僕たちは戦争におびえて生きていた
サンドイッチの中の砂
紅茶の中の新教徒
そこは自由の国だった」
「何様だと思っているんだ?キャプテン・ブリテンか?」

僕は壁を建てている
すばらしい壁を
君を遠ざけるほど高くはないけど
僕を閉じ込めるには十分だ
僕は常軌を失っている
ああ、もちろんさ
葬儀屋の仕事が増える
僕のためではないってことか
僕は壁を建てている
すばらしい壁を
君を遠ざけるほど高くはないけど
僕を閉じ込めるには十分だ


Written by Neil Tennant/Chris Lowe


Produced by Xenomania




ニール: Building a wall」は本当にデモからそんなに変えなかった。

 

クリス: やったよ。重さを変えたんだ。

ニール: つまり構成だね。リズム・トラックは大きく変化した。僕がリズム・トラックとかすべてのそういったもの全部に関わっていた訳じゃない。このトラックが好きなのはブライアン・ヒギンズだ。終わってからですら、クリスと僕は、これを突然ボツにしちゃうかもしれなかった。

クリス: バッキング・トラックは大きな変化を経た。トランスを通した。歌詞のメロディーは実際にトランス・メロディーから来て、僕らはそれからレガート(音をつなげる)してロックになった。

ニール: ジョニー・マーが妙なギターを弾いた。僕たちは、Robert Frippの“Heroes”(デビッド・ボウイの曲)みたいに弾いてくれるように彼に言った。この曲はアルバムの中でスチュアート・プライスのお気に入りのトラックだ。

 

クリス: 僕の弟もこの曲を好きだってよ。

ニール: 僕は、気に行ったものをブレンドしたものが入ってる。僕は既に「Im building a wall, a fine wall(僕は壁、すばらしい壁を創っている)”と”protection, prevention, detection, detention(保護、防止、検出、拘留)」という歌詞があった。僕はある日、通りを歩きながらそれを書いて、自分の携帯電話にそれを歌って吹き込んだ。実際にそう喋った。それはポエムだった。ベルリンの壁についての何かだったに違いないと思う。ベルリンの壁は人々を遠ざけるのではなく、人々を閉じ込めることになっていたからね。

クリス: 彼らはそう言わなかったけど。

ニール: 面白い歌だ。歌詞は長いこと書いてなかった。僕は壁の全ての面を見るつもりだと考えたんだと思う。僕は実際に庭に塀を立てさせた。個人のものじゃなかったけど、壁を造らせた。それからベルリンの壁があった。僕が育ったイギリスの北部では、よく修学旅行で行くようなローマの城壁があった。以前はよくローマの城壁の近くで、家族と一緒にピクニックを開いていた。それでそのすべてをまとめた。それから冷戦のエピソードと、僕の幼年期のエピソードでそれを作ると決めた。僕は「The Man From UNCLE(邦題:0011ナポレオン・ソロ)」を考えていた…。1964年から1965年、僕は「The Man From UNCLE」にすごく夢中だった。その時、10歳か11歳だったな。さらに同時に、この歌は自分たちの周りに精神的な壁を造る人たちに関する歌だ。また、過去のシンボルとしてベルリンの壁を使っている。さらに、人が人を知るために、個人的な過去を使う。君が壁を造っている理由を。でも僕は、本当に落ちついてこの歌詞を考え抜いたことは一度もない。”Theres nowhere to defect to anymore(それ以上に亡命する場所はない)”は、人々がベルリンの壁が壊れて、共産主義が終わった時に言っていたような事だ。時々僕の心に浮かぶんだけど、現代社会にはアンダーグラウンドはないんじゃないかな。君はもうこれ以上抜け出せない。

クリス: ニールが訊くから、僕の声が入ってる。それは僕のアイデアじゃない。

 

ニール: protection, prevention...”には、2つの声を使うのがいいんじゃないかと思ったんだ。

 

クリス: ハッピーで感謝しているよ。

(以上、Literally 3420097月より)




ロウ「僕たちは、どの曲でジョニーにプレーして欲しいかを決めたけど、彼は彼自身の提案を出した。彼は、多くの参照点を持っていて、信じられないほど博識だ。彼が違った要素の分担を思いついたので、彼がやったものすべてが使用されなかった。」

テナント「この歌は、僕たちが純粋なポップなものを残したところに、ちょっと奇妙な部分を足した。ある日、道を歩いていたときに、僕はこの歌詞を考えた。それは、僕がダラム地方の自分の家に塀を建てたからだと思う。僕は"Im building a wall, a fine wall, not so much to keep you out, more to keep me in"という歌詞を何年か前に発展させた。すごくペット・ショップ・ボーイズ的なトラックだ。僕の声とクリスの声、両方を入れたってことが気に入っている。」


(
以上、Big Issue in the Northより)




阿部公房の小説やピンク・フロイドの音楽にもリンクする「壁」をテーマにしたアーティスティックな一曲。シンプルな曲調ながら、グルーヴを凝縮させたような作品であり、彼らの社会観、世界観を実感させられる。
「冷戦時代に成長することを歌っている曲で、特にはっきりした意味はなくて、抽象的な思い出に基づいている。僕が育ったニューカッスルには2000年前にローマ人によって建てられた城壁があったし、ベルリンに行けばベルリンの壁があった。壁は強烈なシンボルであり、人は壁によって離れ離れにもなれば、守られたりもする。この曲の歌詞は変わったイメージのコラージュで、子供の頃の僕を歌っているようなものだ。冷戦時代にはベルリンの壁があったことで、スパイに関するテレビ番組や映画が作られていた。曲の中盤には語りの部分があって、そこでも僕の子供時代のことで、マーベル・コミックのキャラクター、キャプテン・ブリテンのことを語っている。マーベル・コミックが大好きだったんだ。そういった。過去のいろんなことを題材にしている。実は初めはあんまり好きではなくて、徐々に好きになった曲かもしれない」(ニール)

 (以上、2009年「YES」ライナーより)

 

 

ビデオ(アンオフィシャル)(You Tube)




★用語・人物メモ★

The Man From U.N.C.L.E.・・アメリカNBC系列で、1964年から1968年まで4シーズンにわたり放送された、スパイもののテレビドラマ「0011ナポレオン・ソロ」の原題。U.N.C.L.E.とは"United Network Command for Law and Enforcement"(法執行のための連合網司令部)の略(もちろん架空の組織)

Caesar(BC100-BC44)・・Gaius Julius Caesar共和政末期の政治家、軍人であり、文筆家。暗殺された。


centurions・・・ケントゥリオ(百人隊長)ローマ軍の軍団兵の階級。ローマ軍の軍団において重要な役割を担い、また非戦闘時にも軍団兵の統括を行うなどローマ軍の規律の要であった。定員100名の軍団兵で構成されるケントゥリア(百人隊、歩兵小隊)を指揮する。

wasps・・・「スズメバチ」の意味と「White Anglo-Saxon Protestant(白人アングロ・サクソン新教徒:米国での白人エリート支配層を指す語)の両方の意味がある

Captain Britain・・・マーヴェル・コミック(PSB以前にニールが勤めていた)のコミック・キャラクター。1976年〜。

Robert Fripp1946-)…イギリスのギタリスト。UKを代表するプログレ・バンド、キング・クリムゾンのリーダー。




 すごく力強くて、男っぽい曲(それはもしかしたらワタシがライブで、この曲に合わせてクリスが力強くドラムを叩く姿が、ふんどしイッチョで和太鼓を叩く勇ましい日本男児を感じたからかもしれん)。でも、この曲からは戦争を感じさせるから、ロマンチック方面ではないことは確かだよね。こういう曲も入っているのが、Yesがバラエティに富んでいて飽きない理由の一つだと思う。



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