|
YES 1-8
「King of Rome」
|
|
Written by Neil Tennant/Chris Lowe
Produced by Xenomania
/I couldn’t be more tragic (もっと悲劇的だったのかも) / my fate to roam so far from
home (故郷から遠くさまよう宿命) /in search of my lost magic(失った魔法を探して) ニール: 君は本当に、このアルバム全部の音楽を書いたね。 クリス: うん、かなりたくさん仕事をしたよ。その間ずっと、君は車の運転教習をしてたから。それがこのアルバムで起こったことだ。彼には、2時間の運転教習が必要だった。 クリス: 1時間のレッスンだけじゃなくて、2時間のレッスンだったな。 ニール: 3時間ってこともあった。で、戻って来て、ランチのために僕の姉のところまで運転していく。それで僕は運転の実技ができた。で、また戻って来て、クリスと僕はドライブに出掛ける。僕はそれで、その後のことを台無しにしていた。 クリス: ニールはソファーで居眠りしていた。泳ぎにも行ってたかも。 ニール: ランニングもね。 クリス: ランニング!それで、実際に僕は、作曲をしてほとんどの時間をスタジオで過ごした。 ニール: 運よく僕はすばらしい歌詞をたくさん作ってあった。 クリス: 実は、むしろよく仕事ができた、全部ね。 “Beneath the moon(月の下で) / a new lagoon(新しいラグーン) / we glide upon the surface(表面を滑る)” まるでドバイに来ているようだ。彼らは砂漠のど真ん中に湖を建てた。それが僕の考えていたことだ。たぶん、ショッピング・センターの真ん中に湖まである。実際には、初めはマイケル・ジャクソンについては書いてはいなかったけど、マイケル・ジャクソンを暗示したのはラグーン(礁湖)だ。とにかく、ブライアン・ヒギンズは、それがマイケル・ジャクソンのことになるのには乗り気でなかった。もとに戻すよ、と彼に電話した時に、彼は”ああ、「The King of Rome」に戻そう”と言った。実は彼、この歌のことをよく「Baby
come back to me」と呼んでいた。 ニール: 僕はそれをもう一度歌った。“last night I lost a day(昨夜、僕は1日を失った)”とは、僕がクリスとチリからニュージーランドまで飛行機で移動して、(時差で)1日が無くなった体験から来た歌詞だ。僕はノートに歌詞を書き留めた。 クリス: ああ。僕たちはほとんど死にかけたんだよね。チリからのフライトで(注:2007年、彼らの乗った飛行機に、人工衛星の残骸が衝突しそうになった…新聞記事にもなったあわやのニアミス)。 ニール: 全く。 この歌のもう片方の側面は、Daphne de Maurierの「レベッカ」だ。 クリス: いま読んでいて、ほとんど読み終わるとこ。面白い本だ。 |
|
|
★用語・人物メモ★
Manderley・・・イギリスの女流作家、ダフネ・デュ・モーリアの1983年の小説「レベッカ」に登場する、Maxim de Winterの屋敷の名。「レベッカ」はヒッチコックの映画で有名。この小説/映画はプラトニックかつクローゼットな同性愛映画としても知られている。ちなみにアメリカ版「Queer as folk」(ゲイドラマ)でも登場人物が住む家の名前として登場した。
King of Rome(1811-1832)・・・ナポレオン2世(ナポレオン・フランソワ・シャルル・ジョゼフ・ボナパルト、Napoléon François Charles Joseph Bonaparte)は、ナポレオン・ボナパルトの息子。ローマ王、ライヒシュタット公。生まれてすぐにローマ王とされたが、ナポレオン失脚により母親(ハプスブルグ家マリア・ルイーゼ)の故郷オーストリアに渡り、以後父親に会うことはなく、わずか21歳で亡くなった。
マイケル・ジャクソンMichael Joseph Jackson
(1958-2009)…キング・オブ・ポップ。彼の死は本当に衝撃的だった。これまでPSBはマイケルについて、自分たちに与えた影響などを語った事はほとんどなかったと思う。マイケルが亡くなってすぐの6月26日、PSBは自分たちのライプツヒのコンサートで、追悼として「You are not alone」を流した。
Alex Ross(1968-)…アメリカの音楽ライター。カナダで同性婚をしている。代表作「The Rest Is Noise: Listening to the Twentieth
Century」(2007年)は20世紀のクラシック論。
訳していて、涙が出そうでした。曲の美しさも知っているから、聴きながらだと、もっとです。なんでこんなに悲しく、美しく、静かに、孤独を表現できるのでしょう。この曲を聴くと、“流れていく”のを感じます、感情と、時間と、そして場所さえも。ヨーロッパのどこかの知らないカントリー・サイドを、少し期待と不安のうちに電車で移動しているような、そんな感じになります。傑作ですね。PSBはポップでダンスが語られがちだけど、こういうメロウなスロー・バラードこそ、PSBのロマンティシズムの真髄なのではないかと思わされます。