<%group_var="atelier"%> Pet Shop Boys 5 Songs

PSB社会的5曲



PSBの2人が社会や政治にとても興味があるのはよく知られた事実。英国のインテリ層として新聞やインターネットをしっかりチェックし、いま置かれている社会の現実を歌にするのも彼らのお仕事といえましょう。そりゃ、ベッタベタなラブソングの方が萌えますけど、この緩急のつけ具合が、彼らをただのディスコでかかっている曲を作っているライトな人たちではないコトを知らしめています。実際、ワタシも、彼らが取り上げることでそういうことを知ったりします。まさにPSBは「社会への扉」なのです。



♪「Kings Cross」(‘87)

80年代のイギリスは、鉄の女ことマーガレット・サッチャーの政権下で、大不況だった。社会格差を生み、大量の失業者を出した。恐らく親の代から熱心な労働党支持者のニールにとって、保守党の政権自体が不満だったと思うが、その保守党政権がイギリス経済をどん底にまで落としたのなら、一言いわずにはおられなかったのだと思う。
キングス・クロス駅は、東京で言えば上野駅、北からの上京者が辿り着くロンドンの駅。少しは整備されてきているけど、いまだに治安の悪い場所のひとつ。
偶然、この曲の入ったアルバムACTUALLYが出てすぐの1987年11月18日に火事が起こり多数の死者を出した。

*シングルにはなっていないが、ツアーに使用するためにデレク・ジャーマンが撮ったプロモーション・ビデオのようなものがある。クリスがキングス・クロス駅を…男娼を横目に…歩きまわる映像。この映像の一部は「Rent」にも使われている。すごく寂しげな曲。
(YouTube)



 
*歌詞(原文/対訳)、ご本人解説、レビューはこちらのページへ。

 




♪「
The boy who couldnt keep his clothes on」(‘96)

「服を着ていられなかった少年」とは。幼児虐待に遭っている(あるいは過去に遭ってトラウマになっている)少年をモチーフにしている。モデルはクラブですぐ服を脱ぐニールの友人らしいが(だからか、ダンス・トラックに聞こえる)。

ニールもクリスも幸せな家庭に育っているので、家庭での虐待経験は自己体験だとは到底考えられないけど、幼児虐待に遭った子供が社会の被害者としてはもちろん、あるいは時として加害者にもなる負のスパイラルになっている社会的事実を曲にしている。あまり家庭については曲にしないPSBにしては珍しいテーマ。

*残念ながらYouTubeに音源がありません。

*歌詞(原文/対訳)、ご本人解説、レビューはこちらのページへ。





♪「Birt
hday boy」(‘02)

1993年にロンドンで人種差別で殺されたジャマイカ系少年スティーヴン・ローレンスと、1998年にアメリカで、ゲイゆえに殺された大学生マシュー・シェパードからヒントを得ている。つまりはヘイト・クライム、“自分と違う/他人と違う”ことへの無寛容ゆえから来る犯罪への嘆きである。歌の主人公の少年は、クリスマスという最も愛が必要な日に殺されている。ちなみにスティーヴン・ローレンスをモデルにした絵「No woman, no cry」(タイトルはボブ・マーリィの名曲)を描いたクリス・オフィリは、1998年にターナー・プライズを受賞しているが、その年の5人の審査員のうちの一人がニールだった。


このビデオ、前半は「Here」、後半が「Birthday boy」です。(YouTube)




*歌詞(原文/対訳)、ご本人解説、レビューはこちらのページへ。





♪「Integral」(‘06)

2006年、イギリスで導入が決定された国民番号制度(IDカード)への反対歌。日本でも同じような制度があるが、あまり国民が表立って反対した様子がないのでピンとこないけど、これはプライバシー侵害への警告である。この曲の高揚感、与える側と受け側(運がよければ「ステージと観客席」)との一体感は凄まじい。普段から私は「PSBの良さのひとつは、聞き手との間に馴れ合いを持たないノー・メッセージ性にある」と思っているけど、この曲に関しては、多分最も聞き手に「問う」、そして「一体になる」曲だと思う。

*この曲はアルバムFUNDAMENTAL収録だが、シングル(デジタル配信のみ)としてはアルバムDISCO4に収録のリミックス・バージョンが使われている。出演している一般人は公式HPで公募されたが、「1週間後、ロンドンに来れる人、100人募集」みたいなアバウトなものだった。以下のビデオはCUBISM(アルバム・バージョン)より。めちゃくちゃカッコイイ!
(YouTube)




*歌詞(原文/対訳)、ご本人解説、レビューはこちらのページへ。




♪「I get along」(‘02)


一見ラブソング。でもこの主人公「僕」は当時のブレア首相。「君」は、ブレアの参謀だったピーター・マンデルソン。ブレアがマンデルソンを賄賂疑惑からクビにした政治的決断という背景がある。ニールとクリスはこのとき、アメリカに荷担して戦争参加したブレアを見限っていたし、どちらかといえばマンデルソン(しかもオープンリー・ゲイである)の味方だったに違いない。その後、マンデルソンの賄賂疑惑は晴れている。つまりはブレアに対しての嫌がらせだ(彼ら、嫌がらせするとみんなゲイにしちゃうのね)。

ちなみにマンデルソンはその後欧州委員を務め、2008年11月に、ブレアの後を継いだブラウン首相により閣僚復帰している。

*PVは内容とはまったく関係ない、ニューヨークでのアート・スクール学生とのワークショップ。監督はブルース・ウェバー。最初にジョセフ・コンラッドの詞が入っているのがウェバーらしい。ニールとクリスが若い学生(当然、ほぼ男子:女の子はカルバン・クラインのモデル、ナタリア・ヴォディアノヴァ)とイチャイチャ、デレデレしていますが。
(YouTube)



*歌詞(原文/対訳)、ご本人解説、レビューはこちらのページへ。

 



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