<%group_var="atelier"%> アルバムレビューActually

 

ACTUALLY

 

1987.Sep.7 / 2001.June.4

 

ACTUALLY」はペット・ショップ・ボーイズの2枚目のスタジオ・アルバムで、1987年9月にリリースされた。「僕らはツアーをしたことがない。1986年の終わりに、サポートでしたことはあるけど。それは長所だと思うね。だって、まるまる曲を書くことに費やせるんだから。」とニールは言う。「アイデアは、更なる音楽的野望から出てくる。すごいことだ。アレンジはさらに冒険的だ。このアルバムの僕の評価は、僕らのほかのアルバムと同じように辻褄が合うことだと思わない。でも、間違いなく僕らの成功に高いポイントをかせいだね。」

 「すごくエキサイティングな時間だった。」クリスが答える。それからこじつけて付け加えた。「続かないとわかっていたけどね。」

 「ACTUALLY」にレコーディングされた最初の曲は、ダスティ・スプリングフィールドとのコラボ「W
hat have I done to deserved this?」だった。これは「PLEASE」をプロデュースしていたスティーヴン・ヒューグがプロデュースした。ペット・ショップ・ボーイズは今回、いろいろな人材にプロデュースを任せることをすでに決めていた。2ヶ月にわたり、彼らはヒューグとレコーディングをし、多くの人にアプローチし、仕事した。ジュリアン・メンデルソーン(「Suburbia」のシングルバージョンで最初に仕事をした)、アンディ・リチャーズ(ジュリアン・メンデルソーンのプログラマーとして既知)、シェップ・ペティボーン(ニューヨークのダンス・プロデューサーで、「West End girls」「Love comes quickly」「Opportunities」をミックス)など。

  このアルバムは2つのシングル、6月の「It a sin」と8月の「W
hat have I done to deserved this?」が先行発売された。次に「Rent」のリミックスを10月に出し、それからアルバム未収録のシングル「Always on my mind」を11月にリリース、「ACTUALLY」のバージョンとは違うバージョンの「Heart」を1988年3月に発売した。UKでは、「It a sin」、「Always on my mind」、「Heart」は全てナンバー1になり、「What have I done to deserved this?」はリック・アストレーの不動の「Never gonna give you up」に阻まれた。

 「「ACTUALLY」が発売されてすぐ、僕らは他のツアーを計画したが、速攻で中止になった。」とニールは記憶している。「僕らは代わりにたくさんのプロモーションをしてきた。アメリカでは、ヒットをまだ続けていたし、この時、僕らには現代ポップ・ミュージックの秘訣があったと感じている。僕らは求められているものを知っていたと思う。僕らは皇帝時代に入っていた。僕らはダスティと一緒に仕事し、映画「It couldn
t happen here」を作った。エキサイティングだった。」

 「すごく忙しい時期だった。」とクリスは言う。「僕は本当にあまり多くを覚えていないんだ。まさに熱狂だった。良かったことといえば、多くのイギリスの人々がヨーロッパで成功していたから、僕たちはいつもロックやポップスの仲間がいる
港にいた。それって、マジですごい・・・キミがヒースローに到着すると、みんながそこにいるんだよ。デペッシュ・モード、ザ・スミス、ニック・カーメン、ポール・ウェラー、エイス・ワンダー・・・。それで、キミもね。“わースゴイ、そこらじゅうに誰がいるか見てごらんよ。”って。」

 「・・・ザ・スパンド・・・ザ・ヒューマン・リーグ・・・。」ニールが続ける。「僕らがナンバーワンを取ると毎回、スザンヌは僕に電話をかけてきた。彼女は“そう、あなたたちがナンバー・ワンよ・・・フィリップは悔しがっているわ”ってね。」

 彼らはタイトルの「ACTUALLY」は、早くからあったが、その後興味を失って、それを使用しないと決めた。結局、彼らは遠回りをした。「すごく英語っぽいし、いかにもだし、ジョークみたいだし。僕らがよく使う言葉だ。」ニールは言う。「で、文章にもなる。“ペット・ショップ・ボーイズ、マジで”・・・PLEASEの答えになっている。」

 ジャケットには、彼らはスコットランドのアーチスト、アリソン・ワットに彼ら2人の絵の起用をしていた。彼女はナショナル・ポートレイト・ギャラリーのコンペの優勝者だった。彼女は、彼らを3週間座っていることを要求した。彼らは、グラスゴーの彼女のアパートで、彼らの写真を撮って描くように説得した。 しかし、クリスは出来上がった自分のポートレイトが嫌いだった。ニールは、アルバム・ジャケットにふさわしいと思わなかったので、彼らは自分たちの最新の写真を探し始めた。最終的に、彼らはシンディ・パルマノが「W
hat have I done to deserved this?」のビデオのセットで撮ってあった一枚の写真がベストだと思った。彼らはディナー・ジャケットと蝶ネクタイを着用していたので、初めはジャケットのイメージとしてそれを棄却した。「僕はクリスの横であくびをしている。」ニールは言う。「彼女はメタリックの背景を使って、バックステージでセッションした。僕らが座って撮った最初の写真だよ。で、疲れたからあくびが出た。」

 残念ながら、その写真はすでに、次の表紙のためにスマッシュ・ヒッツに送られていた。次の日には印刷に回った。ヤケッパチに電話をして、ペット・ショップ・ボーイズはスマッシュ・ヒッツのためにその日の夕方、新しいフォト・セッションをすることに同意し代わりに、あくびのイメージが戻ってきた。「それで」とニールは思い出す。「マークはそれを白くして、背景を切り抜くという考えだった。」

 彼らはそれが良いとわかった・・・「他の誰もがやったことをしないということだ。」ニールは言う・・・クリスがそれを良いと思ったという意味ではないが。「僕はこの写真はいやだね。」彼は言う。「僕はそれをまともに見れない。あのヒドイ蝶ネクタイをつけているのも、白いシャツも、僕のヘアスタイルも、みんな嫌いだね。ビデオの後はまっすぐ髪をバッサリ切った。」
 
 「ペット・ショップ・ボーイズのイメージをとても限定した。」ニールは反応する。

 「アンニュイ(けだるい)。」クリスは言う。

 「これはグッド&バッドなイメージだね。」ニールは考える。「それは僕たちが真剣であったか否かに関係なく、多分、人々が不思議に思うものの1つだ。事実、アルバム自体はかなりシリアスだ。ジョークさえシリアスなジョークになる。」

(以上、2001年ブックレットより・インタビューby CHRIS HEATH)

 

 



★用語・人物メモ★

スザンヌ(スーザン)とフィリップ・・・ニールの姉と弟の名前。

アリソン・ワットAlison Watt(1965-)・・・グラスゴー生まれの画家。「Catalog」70ページにその写真を元にした絵が出ているが、かなりイマイチ。



前作デビューアルバムからわずか1年半、「Disco」からは10ヶ月を置いての、ハイペースな2枚目のアルバム。
「ACTUALLY」は、間違いなくPSBの商業的絶頂期(2人自身の言うところの“皇帝時代”)のアルバムだ。だから良くも悪くもPSBっぽさは過剰かもしれない・・・ただし、PSBはいつだってPSBっぽいんだが。売れている=ポピュラー(大衆に受け入れられる)=すなわち甘い大味、とならないところがPSBのすごさだ。アルバム全体を覆うこの重苦しさはどうだろう。

 もしかしたら、その“重苦しさ”は、歌がまったくポジティブでないせいかとも思う。PSBの曲の歌詞は90年代アタマあたりまでほとんどそうなのだけど、その状況を切々と歌うだけで、決して「だから頑張ろう」的なドラマチックなメッセージはない。「Rent」のヒロインは愛人生活に甘んじながら、まあいいかと諦めている。「It couldn
t happen here」や「Kings Cross」だって、自分の酷い状況を嘆くだけで特に何も出来ない。その閉塞感が“明るさが身上のポップス”の中では際立って現実的で、痛い。そのネガティヴな歌詞を、切なくて耳障りのいいメロディーに乗せるのだから、たまったもんじゃない。間口は明るく広く、中は暗くて細くて奥深い。

 さらにその重苦しさは、具体的に言えば、80年代後半のイギリス社会(不況、失業率、エイズ、ゲイ・コミュニティの弾圧)そのもので「VERY」のような個人的な絶望的感情はまだ薄いんだが、何だってこんなに重いアルバムが世界的にポピュラーなんだ?なんでお掃除でもしながら口ずさんじゃうんだ?「♪それは〜それは〜それは〜罪〜」って、歌っている場合じゃないだろ。まさにこれが解けない謎である。そして本人たちもわかってはいるけど、お金への執着がすさまじい。「PLEASE」からそうだけど、当時ポップスと言うものは夢や愛の理想の世界を歌うもので、お金のようなあまりにも現実的などうしようもないツール(特にキリスト教においては穢れたもので、罪そのもの)を題材に、しかも
などと言ったものと同系列で美しく昇華させることは、ある種の発見に他ならなかった。この時代は、ゲイ・バッシングが最悪の時代だったので、自分たちのセクシャリティをうまく包み隠しているが、いつもの通り“わかる人だけキャッチしてくれ”というサインは隠してある。あらためて80年代後半と言う“ちょっと歪んだ”時代背景が大きいとはいえ、ここまで異常なアルバムがメジャーに君臨するとは・・・もしかしたら本人たちが一番ビックリしているのかもしれない。

 アルバムの各曲には、当時のアルバム・ライナーに入っていたインタビューも掲載しています。世界が一変した、それから14年後の2001年のインタビューとはちょっと内容が違っていることも確認して下さい。

 


マーガレットの勝手に評価(5段評価)

アゲアゲ度★★★
皮肉度★★★★
政治・社会度★★★★
乙女/ゲイ度★★★
マーガレットのお気に入り度★★★

Dr.マーガレットの処方箋

用法:80年代のパラドックス
効能:高揚感としんみり感

服用に適した時期: 年中
使用量:一日1〜3回
副作用:絶頂感のあとの絶望感

 



各曲の詳細&レビューは、タイトルをクリックしてください

Disc1

 

「One more chance」(84シングル)
「What have I done to deserve this?」(邦題:「届かぬ想い」) 87シングル
「Shopping」

「Rent」86シングル
「Hit music」
「It couldnt happen here」
「Its a sin」(邦題:「哀しみの天使」)87シングル
「I want to wake up」
「Heart」
88シングル
「Kings Cross」

 


Disc2


*以下はFurt
her Listening 1987-1988収録分。
アルバム未収録でリリースされたシングル、B面(カップリング、ボーナス・トラック)、Remixで構成。

 

(「I want to wake up」(breakdown mix))
(「Heart」(shep Pettibone version))
「You know where you went wrong」It a sin」B面
(「One more chance」(7 mix))
(「Its a sin」(disco mix))
(「What have I done to deserve this?」(extended mix))
(「Heart」(disco mix))

「A new life」What have I done to deserve this?」B面
「Always on my mind」(Demo version)87シングル
(「Rent」(7 mix))
「I want a dog」
Rent」B面
(「Always on my mind」(extended dance mix))
「Do I have to?」Always on my mind」B面
(「Always on my mind」(dub mix))

★は過去に未リリースのトラック


詳細データリンク(オリジナル)
詳細データリンク(2001年リマスター2CD)



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